環境省のCCS関連業務を受託していた株式会社KANSAOテクノスが、7年にわたって不適切な経費処理を行い、総額2億3,089万円の過大請求をしていたことが明らかになった。調査報告に基づき、同社は再発防止策の徹底と組織改革に取り組む姿勢を公表した。
7年間で過大請求総額2.3億円
KANSAOテクノスは、2023年度に環境省から受託した「海洋環境保全上適正な海底下CCS実施確保のための総合検討事業」に関し、不適切な費用処理が行われていたことを、2024年9月に公表していた。今回、社外弁護士による調査結果がまとまり、2017年度から2023年度までの7年間にわたるCCS受託業務すべてにおいて不正が存在したことが判明した。
具体的には、以下の2点が問題とされた。
- 費目間の虚偽的な付け替え(例:再委託費と人件費間)
- 契約金額に合わせるための架空請求的処理による実費以上の受領
この結果、KANSAOテクノスは総額約2億3,089万円を不正に受領していたことになる。
同社は、今後、環境省の指導のもとで過大請求分を返還する方針を表明。また、関係役員等に対して厳正な処分を行うことを明言した上で、再発防止に向けた体制強化に取り組む。
具体的な再発防止策として、
- 外部機関の協力によるコンプライアンス研修およびモニタリング体制の再構築
- 組織風土改革に向けた内部通報制度の整備と機能強化
- 財務処理の外部監査導入や内部統制プロセスの透明化
を進める方針だ。
背景
CCSは、日本政府が2050年カーボンニュートラル達成の鍵と位置づける脱炭素技術。中でも海底下貯留は、制度整備や実証事業が加速している。
しかし、その信頼性確保には「透明性ある運用」が必須条件であり、今回の不祥事は、制度そのものへの信頼を揺るがしかねない事案となった。
今後、CCSやカーボンクレジットに関する官民連携プロジェクトが拡大する中で、委託先のガバナンス体制の健全性は社会的信頼の根幹を成す。
今回のKANSAOテクノスの対応は、カーボンマーケットの健全な拡大に向けて業界全体に問われる課題であり、今後のプロジェクト選定基準や受託企業の評価制度に大きな影響を及ぼす可能性がある。
参照:https://www.kanso.co.jp/news/article.html?itemid=74&dispmid=721