関西電力・東京ガス・3Tがガーナで森林再生 「ICVCM準拠の除去クレジット」創出へ

村山 大翔

村山 大翔

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関西電力、東京ガス、スリー・ツリーズ(Three Trees, 3T)は9月11日、ガーナ共和国で除去・吸収型のカーボンクレジットを創出する共同プロジェクトを推進すると発表し、3Tは同日、関西電力および関西電力子会社のK4 Ventures(K4V)と資本業務提携を締結した。プロジェクトは40年間(2025~2064年)で約120万トンのカーボンクレジット創出を目指し、ICVCMのコアカーボン原則(CCPs)に適合させる。

計画はガーナ中南部の荒廃地に植林し、原生林の再生を図るものだ。初期対象は約2,800ヘクタールで、長期的には5万ヘクタール超への拡大を目指す。生物多様性の回復、地域雇用やインフラ整備を伴うコベネフィットの創出も掲げる。

事業は既にVerraのカーボン規格であるVCSにID「4126」として登録済みである。植林開始は2026年3月を予定する。3Tはプロジェクト設計から現地施工、リモートセンシング解析や生物多様性評価までを一貫で担い、検証可能性の高い設計とモニタリングを強調している。

東京ガスは参画にあたり、「カーボンクレジット創出プロジェクトに関与する企業の人権尊重のためのフレームワーク」を適用し、地域コミュニティの人権・環境影響の評価と改善提案を実施する。信頼性向上と社会的受容性の確保を通じ、創出クレジットの品質向上に寄与する方針だ。

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東京ガスはグループ経営ビジョン「Compass2030」の下、e-メタンなどの脱炭素技術の社会実装を進める一方、移行期の手段としてカーボンオフセット都市ガスの供給を拡充してきた。2024年以降はJ-クレジット創出支援や自然由来カーボンクレジット創出ファンドへの出資も進め、2024年9月には最大2,500万米ドル(約39億円)を拠出する方針を公表している。信頼性の高いカーボンクレジットの安定調達と国内市場の成熟を見据え、今回の国際協業をポートフォリオ強化につなげる。

関西電力と東京ガスは分散型エネルギーや家庭用機器の実証などで協業実績があり、今回の取り組みで連携領域をカーボンクレジットへ拡大する。両社は将来的にコンプライアンスカーボンクレジット市場向けも含めた共同開発を検討する。

3Tの清水イアン社長は「カーボンクレジットは企業のトランジションを支える重要な市場メカニズムだ。森林再生の実装で検証可能な成果とスケールを目指す」と述べた。気候行動団体グローバル・オプティミズム(Global Optimism)創設パートナーで3Tアドバイザーのトム・リヴェット=カーナック氏は「自然を再生し守らなければ気候危機は解決できない。ガーナでの取り組みは自然を活用した解決策の象徴だ」と指摘した。シブサワ・アンド・カンパニーの渋澤健氏は「大企業とアフリカ発のスタートアップの連携を歓迎する」と評価した。

本件は、日本の需要家向けに「ICVCMのCCPs準拠のカーボンクレジット」を提供可能なパイプラインの形成を意味する。VCS登録済みであることに加え、人権デューデリジェンスの導入、長期の森林管理、リモートセンシング活用は、追加性と持続性の検証、カーボンリーケージ管理、測定・報告・検証(MRV)の堅牢性を高める要素である。初期は2,800ヘクタールの植林により吸収量の早期立ち上げを図り、5万ヘクタール規模への拡大で40年間累計120万トンの発行を狙う。

今後の焦点は、VCSの方法論適用とICVCM承認のタイムライン、コミュニティ合意形成の進捗、植生回復のモニタリング設計、2026年3月の植林開始に向けた現地実装体制の整備である。初回クレジット発行時期と、日本国内での活用メニューへの組み込み計画が次のマイルストンとなる。

参考:https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20250911-01.html

参考:https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250911_1j.pdf

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000169203.html