神奈川県は2025年12月26日、県内の藻場保全活動によるCO2吸収量を対象とした「Jブルークレジット」の認証を受けたと発表した。今回の認証では、国内で初めて自律航行型の水中ドローンと人工知能(AI)による計測手法が採用された。
同手法は従来の潜水士による手動計測に比べ、コスト削減と安全性向上に寄与し、炭素除去(CDR)クレジットの供給拡大を加速させる狙いがある。

ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)は12月19日、江の島地区で9.6トン、城ヶ島地区で33.5トンのCO2吸収量をそれぞれ認証した。このプロジェクトは、神奈川県政策局が主導し、県内の一般社団法人ブルーアーチおよび慶應義塾大学と連携して実施されたものである。認証されたクレジットの購入希望者に対する公募は、JBEの公式ウェブサイトを通じて12月末までに開始される予定だ。
これまで、海草や海藻による炭素貯留「ブルーカーボン」の定量化には、潜水士が海中に潜って藻場の分布を測定する手法が一般的であった。
しかし、この手法は多額の費用と作業時間を要するほか、天候や透明度に左右される安全面の課題があり、小規模な漁業団体などがクレジット申請を行う際の大きな障壁となっていた。神奈川県内における2024年度の申請件数が2件に留まっていた背景には、こうしたコスト面の問題が指摘されている。
今回導入された新技術は、衛星誘導式の自律操縦・手動切替型水中ドローン(ハイブリッドAUV)を活用したものである。操縦者の熟練度に依存せず、一定の航路を自動で巡回して藻場の高精細な画像を撮影することが可能となった。収集された画像データは、慶應義塾大学総合政策学部の古谷研究室が開発した「海藻種別判定AIモデル」によって解析され、海藻の種類ごとの被度(面積)を自動で算出する仕組みだ。
神奈川県は、今回の実証事業を通じて、簡易かつ低コストなブルーカーボンの測定・申請モデルを確立したとしている。この技術的進歩により、資金力や人員が限られる地域団体でもカーボンクレジット市場への参入が容易になる見通しだ。県は今後、このモデルを県内外の藻場保全活動に横展開し、持続可能な海洋生態系の保護と脱炭素社会の両立を目指す方針を示している。
次回の大きな節目は、12月末に予定されているJBEによるクレジット購入の公募開始である。市場がこの新しい計測手法によるクレジットをどのように評価し、どの程度の価格で落札されるかが、今後のドローン計測普及の鍵を握ることになる。
今回の神奈川県の取り組みは、ブルーカーボンという「計測が極めて困難だった領域」に、ロボティクスとAIを投入して透明性と経済性を担保した画期的な事例だ。これまでブルーカーボンクレジットは、算出コストの高さからプレミアム価格になりやすく、流動性が低いという課題があった。
今回の自動化技術が標準化されれば、日本全国の沿岸部で「眠っている藻場」が次々とクレジット化される可能性がある。特に、中小規模の漁協にとって、保全活動が新たな収益源に変わるチャンスとなるだろう。
投資家視点では、ドローンによるデジタル・データに基づいたクレジットは、従来のアナログな推計よりも「グリーンウォッシュ」のリスクが低い、信頼性の高い投資対象として映るはずだ。


