鹿児島・錦江町が「再造林率100%」へ 行政・林業組合・民間企業が包括協定、J-クレジット創出で費用循環

村山 大翔

村山 大翔

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鹿児島県肝属郡錦江町、大隅森林組合、住友林業の連結子会社である日本森林アセットは10月1日、「森林に関する包括連携協定」を締結した。伐採跡地の再造林率100%を目指し、行政・林業事業体・民間企業が一体となって取り組む全国初の枠組みとなる。

協定に基づき、日本森林アセットが伐採跡地を買い取り、大隅森林組合が再造林を実施する。錦江町は森林環境譲与税を活用して費用の一部を助成し、再造林が完了した森林からJ-クレジットを創出。カーボンクレジットの販売収益は再造林費用に充当し、費用循環型の仕組みを確立する。

新田町長は「森林の多面的機能を将来世代に引き継ぐには、経済的に持続可能な再造林モデルが不可欠だ」と述べた。石村社長も「カーボンクレジット創出を通じて再造林の採算性を高め、森林経営の担い手育成にも資する」と強調した。

錦江町は人口5,948人で、町の76%が森林に覆われている。しかし令和6年度(2024年度)の再造林率は約35%にとどまり、伐採跡地の管理放棄が進んでいる。国土交通省調査によれば全国の森林所有者の約58%が「経済的負担や後継者不足」を理由に森林所有権を手放したい意向を示しており、錦江町も例外ではない。

森林は二酸化炭素吸収や炭素固定、水源涵養、国土保全、生物多様性の確保といった多面的機能を持つ。再造林の停滞は脱炭素政策だけでなく、防災や地域経済にも影響を及ぼす。

日本森林アセットは住友林業と三井住友信託銀行の出資により2024年1月に設立。2030年までに全国で3,000ヘクタールの再造林を目標に掲げ、すでに北海道から九州まで複数県で事業を進めている。小規模・分散所有林をとりまとめる「プログラム型Jクレジット」を活用し、申請コストを抑えつつ採算性を確保している。

3者は今後、森林整備や木材資源の有効活用、担い手育成、災害防止などの分野で協力を拡大する。錦江町は再造林率を100%に引き上げるとともに、カーボンクレジット収益を活用して持続可能な森林経営を実現する方針だ。

協定は全国に先駆けた官民連携の試みであり、成功すれば「再造林とカーボンクレジットを結びつけた森林経営モデル」として全国展開の可能性を持つ。次の焦点は、担い手不足を克服しながら2030年までに目標の再造林面積を確保できるかにある。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000205.000052275.html