東京証券取引所(JPX)は9月8日、2023年10月に開設したカーボンクレジット市場の累計売買高が100万トンに到達したと発表した。8日時点での累計は100万3,386トンCO2となり、開設から466営業日のうち363日(78%)で取引が成立した。市場参加者も334者に拡大しており、開設2年にして国内における排出削減手段としての取引定着が進んでいる。
市場は2024年9月に累計売買高50万トンを突破しており、その後1年足らずで倍増した。特に再エネ由来クレジットと省エネ由来クレジットは価格が上昇しており、需要拡大を背景に市場の価格形成力が強まっている。1日平均取引量は2,153トンCO2だが、取引規模には大きなばらつきがあり、大口契約が全体を底上げする構造は、世界のボランタリーカーボンクレジット市場と類似している。
現在、取引対象は政府が認証する「J-クレジット」に限られている。今後はJCM(二国間クレジット制度)やGX-ETSに基づく「超過削減枠」などの導入が検討されており、将来的には排出枠や先物を含む多様な取引へ拡張される見通しだ。
GX-ETSは2023年度から試行が始まり、2026年度に本格稼働する予定である。JPXの市場は同制度の取引プラットフォームとして設計されており、今後は市場調達義務化や国際市場との接続を通じ、制度運用と市場活性化の両輪を担うことが期待されている。
一方で、この「カーボンクレジット取引市場」というビジネスモデルには、スタートアップを含む多様な事業者が参入している。政府主導の枠組みにおいて東証のみを優遇すべきではなく、公正な市場競争を促すべきだという指摘もある。ただし、取引量を継続的に公表しているのはJPX市場のみであり、取引市場全体の透明性向上は健全な競争促進のためにも不可欠だといえる。
JPXは「カーボンクレジット市場運営を通じてカーボンニュートラル実現に貢献する」と強調しており、国内外の制度整備を背景に市場拡大が見込まれる。次の焦点は、GX-ETSの本格導入に合わせた取引対象の拡充と、参加者増加による価格透明性の強化となる。