日本と欧州委員会(European Commission)は2026年3月24日、日EU気候高級事務レベル会合(第3回)をベルギー・ブリュッセルで開催した。両者はネットゼロの達成および共有する経済的・地政学的課題への対処に向けて連携を深化させることに合意した。
日本側からはオンラインで土居健太郎環境省地球環境審議官が出席し、欧州委員会からはクルト・ヴァンデンベルケ(Kurt Vandenberghe)気候行動総局長が登壇し、それぞれ開会の挨拶を行った。
両者は現在の湾岸地域の危機という地政学的文脈を踏まえ、クリーンエネルギー移行がネットゼロの達成にとどまらず、エネルギー安全保障・自立性・国際競争力の維持にも直結する戦略課題であることを改めて確認した。
あわせて多国間主義の堅持とパリ協定への揺るぎないコミットメントを再確認し、今世紀末までの気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れた排出削減加速の必要性を共有した。
両者は、2030年目標を定めた国が決定する貢献(NDC)および最新のNDC(日本は2035年度・2040年度、EUは2035年を目標年度とするもの)の実施状況について意見交換を行った。
また、今年後半にトルコ・アンタルヤで開催予定のCOP31(第31回気候変動枠組条約締約国会議)の成功に向けて協力することでも合意した。さらに、NDCおよび隔年透明性報告書(BTR)を未提出の国に対し、策定・提出を促す国際協力を強化することで一致し、パリ協定の野心向上サイクルの着実な実施を後押しする姿勢を示した。
両者は2021年5月に発足した「日・EUグリーンアライアンス」を想起しつつ、2026年を通じて産業部門の脱炭素化、気候変動適応、カーボンプライシングとカーボンクレジット、炭素回収・利用・貯留(CCUS)、サステナブル・ファイナンス、地方レベルでの気候行動といった分野での交流促進を確認した。
なかでもカーボンプライシングとカーボンクレジットが正式な協力テーマとして文書に明記されたことは注目に値する。EUはEU ETSの改革とCBAM(炭素国境調整メカニズム)の本格運用を同時並行で進めており、日本のGX-ETSの制度設計・運用との整合性を巡る対話が本格化する可能性がある。また炭素回収・利用・貯留(CCUS)の協力明示は、技術開発・実証から国際標準化まで幅広い連携の扉を開くものといえる。
日EU間でカーボンプライシング・カーボンクレジット・炭素回収・利用・貯留(CCUS)が正式な協力分野として明文化されたことは、日本企業にとって制度リスクと機会の双方を示す重要シグナルだ。EU ETSとGX-ETSの接続可能性、CBAM対応コストの動向、そして国際的なカーボンクレジットの認証基準への影響を見据え、自社のカーボンプライシング戦略とカーボンクレジット活用方針の再点検を急ぐ必要がある。