日本とチリがJCM協力覚書に署名 脱炭素技術輸出と「高品質カーボンクレジット」確保へ道筋

村山 大翔

村山 大翔

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日本政府とチリ政府は2026年1月16日、サンティアゴにおいて二国間クレジット制度(JCM)に関する協力覚書(MoC)を締結した。

曽根健孝駐チリ大使とアルベルト・ファン・クラベレン・ストルク外相が署名し、両国はパリ協定第6条に基づく国際的な排出削減枠組みの運用を本格化させる。本合意により、日本の高度な脱炭素技術をチリへ導入し、得られた削減成果を日本の国が決定する貢献(NDCs)の達成に活用する体制が整った。

今回の合意は、2015年に署名された旧制度をパリ協定下の新たなルールに基づき更新したものである。新ルールでは、排出削減や吸収の成果がダブルカウントされることを防ぐため、両政府が「相当の調整」を適用することが明記された。また、クレジットの対象となる期間(クレジット期間)は、10年の固定期間または5年の更新制(1回のみ更新可能)から選択できる。

JCMの大きな特徴は、プロジェクト実施に対する日本政府の手厚い資金援助だ。環境省が提供する「JCM設備補助事業」を活用すれば、初期投資費用の最大50%の補助を受けることが可能となる。これにより、コスト面が障壁となっていた最先端の脱炭素技術や炭素除去(CDR)技術の海外展開が促進される。

実際にチリでは、ランカグア市における12MWの太陽光発電と33MWhの蓄電池を組み合わせたプロジェクトや、大学の屋上への太陽光発電システムの導入など、すでに17件のプロジェクトがリストアップされている

環境整合性の担保についても厳格な基準が設けられた。発行されるJCMクレジットは、2021年以降に達成された実在性、追加性、永続性のある削減成果に限られる。プロジェクト参加者は「持続可能な開発実施計画」の作成を義務付けられ、生物多様性や人権への配慮、現地コミュニティへの貢献状況について、共同委員会による審査を受ける必要がある。

今後は、チリ国内でのプロジェクト登録とクレジットの発行が加速する見通しだ。特にチリは再生可能エネルギーのポテンシャルが極めて高く、今後は大規模な太陽光・風力発電だけでなく、グリーン水素製造や直接空気回収(DAC)といった次世代技術との連携も期待されている。

今回のチリとのMoC再署名は、日本がパリ協定第6条2項に基づく「高品質なカーボンクレジット」の確保において、中南米での足場を固めたことを意味する。

特筆すべきは、チリ側がJCMレジストリを運用し、ITMOsとしての承認プロセスを明確化した点だ。これは、クレジットの流動性と透明性を求める投資家にとって強い安心材料となる。

日本企業にとってのチャンスは、単なる機器売りから「クレジット創出を伴うアセットマネジメント」への転換にある。

特にチリのような再エネ先進国では、蓄電池やスマートグリッド技術の需要が極めて高く、JCM補助金をテコにした参入障壁の低減は、欧米勢との競争における強力な武器となるだろう。

今後は、削減したCO2をカーボンクレジット化するだけでなく、炭素除去(CDR)分野での先行事例を作れるかどうかが、日本のグローバルな炭素市場での地位を左右することになる。

参考:https://www.jcm.go.jp/cl-jp/information/619#:~:text=Japan%20and%20Chile%20signed%20the,Mechanism%20(JCM)%20in%20Santiago.