経済産業省と環境省は2025年11月25日、二酸化炭素回収・貯留(CCS)事業の制度設計に関する合同会議を開催し、CCS事業法に基づく詳細な規制案を提示した。事業終了後に国(JOGMEC)へ管理が移管された後のモニタリング費用について、事業者は「30年分」の費用をあらかじめ拠出金として納付する基準案が示されたほか、CCSバリューチェーンにおける公正なアクセスを担保する約款の枠組みが明らかになった。
JOGMEC移管後の資金モデル
今回の会合における最大の論点は、貯留事業者が事業を終え、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に管理業務を移管した後の「資金確保措置」である。
CCS事業法では、貯留事業の廃止許可を受けた後、モニタリング等の管理業務はJOGMECが引き継ぐこととなる。提示された案によると、この際に事業者が納付すべき拠出金の算定基準として、移管後の管理業務に必要な費用を「30年分」見積もることが提案された。
この「30年」という期間設定は、EUのCCS指令における財務的保証(Financial mechanism)の先行事例を参照したものであり、国際的な整合性を意識した設計となっている。また、拠出金の総見積額には、将来的な資材価格の上昇や、万が一のCO2漏えい時の応急措置に備え、一定のリスクプレミアムを加算することも盛り込まれた。
拠出金の納付期間については、原則として事業者に収入がある「CO2圧入期間中」とし、この期間内に将来の管理費用を積み立てる仕組みとする。
圧入停止後の「無収入期間」への備え
一方、CO2の圧入を停止してから、安全性が確認されJOGMECへ移管されるまでの期間(閉鎖措置期間)についても、厳格な資金確保が義務付けられる。
この期間は事業者にとって収入が途絶えるフェーズとなるが、モニタリングや坑井の閉塞といった多額の費用が発生する。そのため、経産省は以下の3つの費用について、事前の資金確保を求める方針を示した。
- モニタリングに要する費用
- 閉鎖措置(設備の撤去等)の実施に要する費用
- CO2漏えい発生時の応急措置費用
具体的な資金管理方法としては、企業内部での積立のほか、第三者が管理するエスクロー口座の活用や、信託会社による資金管理など、事業者が選択できる柔軟な枠組みが提案されている。
事業廃止の判断基準と技術的要件
事業者がJOGMECへ管理を移管し、事業を廃止するための条件(廃止の許可基準)についても議論が進展した。
CO2圧入停止後、貯留したCO2が地下で安定するまでに必要な期間として、少なくとも「10年」が経過していることが申請の条件となる。ただし、シミュレーションと実測値の整合性が取れ、早期に安定が見込まれる場合には、この期間を短縮できる規定も設けられた。
また、海域において貯留するCO2の純度基準については「99vol%以上」を原則としつつ、安全性が確認されればそれ未満も許容する現実的なラインが示された。
インフラへの公平なアクセスを規定
CCSの普及には、排出事業者が輸送・貯留インフラを公平に利用できる環境が不可欠である。今回示された「特定貯留事業約款」および「特定導管輸送事業約款」の骨子案では、正当な理由なくCO2の受け入れを拒否することや、特定の排出事業者に対する不当な差別的取り扱いが禁止された。
CCS事業者は、貯留料金や責任分界点、CO2の計量方法などを約款に明記し、公表することが義務付けられる。
経産省と環境省は今後、パブリックコメント等を経て、令和7年(2025年)度内の政省令・ガイドラインの制定を目指す。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/carbon_management/ccs_business_system/003.html
