政府のJ-クレジット制度運営委員会は9月4日、環境省で第40回会合を開き、方法論や実施要綱など制度文書の複数改定を承認した。登録簿システムにおけるダブルカウント自動チェック機能を2025年12月に実装する計画も示され、カーボンクレジット市場の取引状況と制度の最新データが報告された。
委員会は、
- 認証対象期間が適用されないプロジェクトの申請期限の整理
- プログラム型での活動量モニタリング共通要件の明確化
- モニタリング方法で参照する制度文書名の修正
- 森林の権利保有者に関する「不同意がないことの確認」手続
- 方法論策定の要件・手続
- 認証対象期間終了日の誤記修正
- ビンテージ毎のモニタリング説明の追記
- 農業方法論(AG-005)の地番表記の明確化
を審議し、改定案を承認した。
このうち、制度文書の誤記修正では、認証対象期間の終了日を「開始日から8年を経過する日」とする本来の規定に合わせて文言を是正する。 また、ビンテージ毎の計算や按分の取扱いを明示し、暦年・年度区切りでの算定手順を追記する。
重複計上対策では、プログラム型プロジェクトの会員が他プロジェクトにも二重登録していないかを登録簿で自動確認する機能を年内に導入し、疑義が生じた場合は双方の運営管理者が帰属確認を行った上で申請するフローを示した。 さらに事務局は、発行前にダブルカウントをチェックし、発覚時は認証申請の修正を求める運用、事後的に発生した場合は相当分のクレジットを外部調達して取り消す処理を行うと説明した。
市場動向の報告では、東京証券取引所のカーボンクレジット市場で、2025年8月15日までに参加者334者、約904,810トンを約33.9億円で約定。区分別の加重平均約定価格は、全体3,741円/t-CO2、森林5,631円、再エネ(電力)4,358円、省エネ2,330円とされた。
制度全体の指標では、登録プロジェクト件数が累計1,262件、カーボンクレジット認証量が約1,208万t-CO2、認証回数は延べ1,304回に達した。 用途の変化として、2016~17年度に急増した温対法の排出係数調整向けの活用は減少傾向にあり、近年はオフセット目的の無効化・償却が増えている。
無効化・償却の進捗は、これまでに認証された合計1,421万t-CO2のうち713万t-CO2(約53%)が既に処分済みで、削減系(再エネ・省エネ)は約55%、吸収系は約19%が無効化・償却された。
農業分野のトレーサビリティ強化としては、AG-005(中干し延長)で個別活動実績報告リストの地番表記を面積根拠資料に基づき統一し、eMAFFに記載のない水田への対応も整理した。適用は2025年1月1日以降の活動に遡って求められる。
委員会はまた、家畜メタン削減と貨物鉄道シフトの新方法論策定の検討状況を確認した。 制度運営の透明性・一貫性確保に向けた文書改定と、重複計上対策・市場整備の両輪を同時に進めることで、カーボンクレジットの環境完全性と価格発見の機能向上が焦点となる。
参考:https://japancredit.go.jp/steering_committee/01/#steering40