カーボンインセッティング普及へ始動 農林中金「第1回全体会合」開催 Scope3削減と国内ガイドライン策定へ

村山 大翔

村山 大翔

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農林中央金庫は、食農バリューチェーンにおける脱炭素とネイチャーポジティブ移行を目的に設立した「インセッティングコンソーシアム」の第1回全体会合を7月に開催した。本格稼働に向け、新たに16社が参画し、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)をテクニカルパートナーに迎えた。今後は、国内初となるインセッティングのガイドライン策定やワーキンググループの設置を通じ、企業単独では困難なScope3削減の取り組みを支援する方針だ。

今回の会合には、既存メンバーに加え、カゴメ、サントリーホールディングス、日清食品ホールディングス、明治ホールディングスなど大手食品・飲料メーカーや小売が新規参加した。これにより、参画企業は計20社を超え、食農VC全体を網羅する体制が整いつつある。

基調講演では、農研機構の須藤氏や経済産業省GXグループの折口氏が登壇し、農業分野の脱炭素政策とインセッティングを巡る国際的な議論の動向を解説した。さらに、ソリューション企業による技術紹介やメンバー間のネットワーキングが行われ、今後の連携深化に向けた具体的な議論が進められた。

インセッティングは、企業が自社バリューチェーン内で投資や支援を行い、Scope3に含まれる原材料調達由来の温室効果ガス(GHG)排出を削減する仕組みである。欧州を中心に国際的な炭素会計基準に位置づけられつつあるが、日本国内では概念の普及や制度設計が遅れている。農林中金は「生産者所得の向上と食農VCのトランジション実現を同時に目指す」としており、特に農業現場と食品メーカーの接点構築を加速させる考えだ。

今後は「米穀」「畜産」「土壌」の3分野でワーキンググループを立ち上げ、実践的な脱炭素手法の検討を進める。農林中金は「幅広いステークホルダーの参画を呼びかけ、国内版ガイドラインの策定を通じて国際基準に適合する仕組みを構築する」としている。

インセッティングは、カーボンクレジットの購入に依存せず、自社のサプライチェーン内で排出削減を実現できる点で注目を集めている。今後、農業由来の排出削減を可視化し、Scope3削減と生産現場支援を両立する日本型モデルが確立できるかが焦点となる。

参考:https://www.nochubank.or.jp/news/news_release/2025/1-5.html