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北海道銀行・佐呂間町・バイウィル、町有林J-クレジット創出で三者連携 収益はホタテ養殖にも還流

2026.05.27 更新 2026.05.28 読了 約4分
北海道銀行・佐呂間町・バイウィル、町有林J-クレジット創出で三者連携 収益はホタテ養殖にも還流
出典:イメージ

北海道銀行、北海道佐呂間町、バイウィル(東京都中央区)は5月26日、佐呂間町内における環境価値創出に関する連携協定を締結した。町有林を対象とした森林由来J-クレジットの創出を中核に据え、バイウィルが申請手続きと販売を支援し、北海道銀行が販売先企業の紹介を担う。佐呂間町は2026年4月1日にゼロカーボンシティ宣言を公表したばかりで、宣言から約2ヶ月での実装フェーズ移行となる。

三者の役割分担と森林由来クレジットの位置づけ

協定の連携事項は、環境価値に関する情報・サービス・ノウハウの提供、環境価値を活用した新たなビジネスモデルの創出、その他三者が認める事項の三点である。具体的な実装としては、バイウィルが森林由来J-クレジットの創出・販売を支援し、北海道銀行が販売面で協力する構図となる。

森林由来J-クレジットは、J-クレジット制度における主要な創出類型のひとつであり、森林経営活動による吸収量が認証対象となる。市場では2050年カーボンニュートラル達成に向けた企業需要の拡大により、除去系カーボンクレジットへの需要が高まっており、森林吸収由来カーボンクレジットは国内発・除去系という二重の希少性を持つ。

自治体が町有林を対象にカーボンクレジット創出主体となる事例は近年増加傾向にあり、地方自治体にとってカーボンクレジット販売は森林管理費用の自己調達手段としての側面を持つ。

地銀のサステナビリティビジネスとしての射程

北海道銀行はほくほくフィナンシャルグループの中核行であり、本件ではバイウィルを佐呂間町に紹介する起点となった。地銀が果たす役割は、地域内のクレジット創出ポテンシャルを持つ自治体・事業者と専門事業者をつなぐマッチング機能、取引先企業ネットワークを活用したクレジット販売先の開拓、の二点に集約される。

地銀にとってサステナビリティ領域は、伝統的な融資ビジネスを補完する手数料収入源として位置づけられている。カーボンクレジット販路提供は与信を伴わない仲介型ビジネスであり、地域金融機関の取引先基盤を直接収益化できる構造を持つ。ただし、地銀単独ではカーボンクレジット創出・MRVの専門知見を保有しないため、バイウィルのような専門事業者との連携が不可欠となる。

ホタテ養殖への収益還流というコベネフィット設計

本件で特筆すべきは、武田温友町長がカーボンクレジット販売収益の使途として森林保全に加え「佐呂間町のホタテ養殖事業の持続的発展」を明言した点である。佐呂間町はサロマ湖に面し、ホタテ養殖が基幹産業のひとつとなっている。森林由来カーボンクレジットの収益を、森林管理を経由してさらに沿岸漁業の持続性に還流させる設計は、流域単位での生態系サービス連関を踏まえたコベネフィット型クレジット運用と位置づけられる。

カーボンクレジットのコベネフィット価値は、ICVCMのコアカーボン原則やVCMIのガイダンスでも品質指標のひとつとして重視されており、買い手企業のサステナビリティ報告における訴求材料となる。森林保全→流域水質→水産業という連関を明示できれば、単純な吸収量トン単価以上の価値を市場で訴求できる可能性がある。もっとも、こうしたコベネフィットを定量化し、買い手企業の開示要請に応える形で文書化することは容易ではなく、運用段階での測定設計が論点として残る。

編集部の視点

本件は地銀・自治体・専門事業者の三者連携モデルが、地方自治体のゼロカーボンシティ宣言を実装フェーズへ移行させる標準的な装置となりつつあることを示している。自治体は森林資源を保有しながらカーボンクレジット創出のMRV知見と販路を持たず、専門事業者は全国の自治体への接点を欠き、地銀は両者をつなぐ取引先基盤と地域信用を保有する。この補完関係は、ゼロカーボンシティ宣言を行った1,200を超える自治体が直面する共通課題への解になりうる。

ホタテ養殖への収益還流は、森林由来カーボンクレジットを単なる吸収量取引から流域生態系サービスの統合的マネタイズへと拡張する試みとして注目される。森林保全と沿岸漁業を一体で語れる地域は限定的だが、本モデルが定量的なコベネフィット指標として体系化されれば、国内森林由来カーボンクレジットの差別化軸として機能する可能性がある。地銀のサステナビリティビジネスの成否は、こうしたコベネフィット設計を買い手企業の開示要請に接続できる商品設計力にかかっている。

参考:https://www.hokkaidobank.co.jp/business/news/uploads/1e66d5a42dd94523cf77aaa0e066d73a.pdf

カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。