ネイチャーベースのカーボンクレジット事業を手がけるGreen Carbonは7月29日、フィリピン北部ヌエバ・エシハ州にあるセントラルルソン州立大学(Central Luzon State University、CLSU)と、稲作分野における温室効果ガス(GHG)削減およびカーボンクレジット創出に関する協定(MOA)を締結した。現地農家への技術支援や研修を通じ、水田の間断灌漑(AWD)によるメタン排出削減を推進し、農家の収益向上と持続可能な農業の普及を目指す。
Green CarbonはCLSUと連携し、削減量をカーボンクレジットとして可視化・取引可能な形にする仕組みを確立する。これにより地域の農業者に新たな収入源を提供するとともに、脱炭素と食料安全保障の両立を図る考えだ。
フィリピンでは農業分野の年間GHG排出量が約5,400万トンに上り、このうち水田由来が約1,300万トンと全体の4分の1を占める。Green Carbonは2023年度から現地研究機関と協力し、AWD技術の普及に取り組んでおり、今回の協定はその本格展開につながるものとなる。
締結地のヌエバ・エシハ州は、同国の米生産量の約1割を担う「米の穀倉地帯」として知られる。生産性向上とGHG削減を同時に進める取り組みは、地域全体の持続可能な農業慣行のモデルケースとなる可能性がある。
Green Carbonはまた、2025年2月に承認された方法論を基に、フィリピンの水田メタン削減を日比両国の二国間クレジット制度(JCM)に組み込み、カーボンクレジット創出を進めている。日本国内ではJCMクレジットがGX-ETSで利用可能となったことから、企業の排出削減需要に応える形で今後の需要拡大が見込まれる。大北代表は「経済性を確保しながら、フィリピンと日本双方の脱炭素に貢献していく」と強調した。