ネイチャーベースのカーボンクレジット創出事業を展開するGreen Carbonと、衛星データを活用したデジタル測定・報告・検証(dMRV)ソリューションを開発するArchedaは、経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する「NEDO Challenge Satellite Data-農林水産業を衛星データでアップデート!」で1次審査を通過した。両社は東南アジアの稲作農家を対象に、カーボンクレジットを活用したマイクロファイナンス(農業保険)サービスを提案しており、持続可能な農業モデルの構築を目指す。
提案名は「東南アジアにおける稲作農家を対象としたマイクロファイナンスサービスの提供による供給量の安定化」。異常気象の頻発で収量や品質の低下リスクに直面する小規模農家に対し、カーボンクレジット販売で得た資金を原資に収入補償や営農支援を行う仕組みを構築する。農業保険機能を通じて生計の安定を図りつつ、温室効果ガス削減にも資する仕組みとする。
衛星データを活用することで、対象地域の水田の水管理状況や生育環境を高精度に把握し、収量リスクを定量化する。特に間断灌漑(AWD)と呼ばれる手法を組み合わせ、メタン排出を抑制しながら水使用量の最適化を実現する。これにより、カーボンクレジット創出の信頼性と透明性を高め、国際的な認証スキームにも適合させる方針だ。
Green Carbonは、日本国内外で水田、バイオ炭、森林保全、マングローブ植林、家畜由来メタン削減など、自然由来カーボンクレジットの創出支援を展開している。国内では2023年度に水田由来で約6,220トンのJ-クレジット認証を取得し、2024年度には対象面積を約40,000ヘクタール(約80,000トン)に拡大している。
一方、Archedaは衛星データを活用して自然由来クレジットプロジェクトのdMRVを支援するスタートアップで、森林(ARR・REDD+)、水田(AWD)、マングローブなど多様な領域で分析ソリューションを提供している。両社は2024年4月に業務提携を締結し、衛星解析とプロジェクト登録支援を一体化したワンストップ型のカーボンクレジット創出支援体制を整えている。
NEDO Challengeは、社会課題解決に資するシーズを懸賞金型で公募し、研究開発・実証を促すプログラムである。1次審査通過者には専門家によるメンタリングや開発環境が提供され、2026年7月に最終審査結果が発表される予定。懸賞金は1位1,000万円、2位500万円、3位300万円。
今回の提案は、カーボンクレジットを社会的金融インフラとして再定義し、衛星データによるモニタリング精度の向上を通じて農業分野の適応策を拡張する取り組みといえる。気候変動対応と地域経済強化を両立するモデルとして、東南アジア諸国での展開が期待される。
参考:https://archeda.inc/jp/news/20251024-2
参考:https://green-carbon.co.jp/jpnedochallenge1stscreening/