米非営利団体「Ocean Visions(オーシャン・ビジョンズ)」は5月29日、海洋炭素除去(mCDR)手法の環境影響を評価する包括的枠組み「環境影響評価フレームワーク(EIAF)」の開発を開始したと発表した。海洋調査大手のオランダ企業「Fugro(フグロ)」が主導を担い、米国のIntegral Consultingおよび英国の国立海洋センターと連携する。
mCDRは海水を利用して大気中のCO2を除去する技術群で、アルカリ度増強、海藻・微細藻類の養殖、直接海洋吸収などが代表例。地球温暖化抑制の切り札として期待される一方、生態系への影響など不確実性が残る。
EIAFは、mCDRの環境的安全性と有効性を科学的根拠に基づき評価する共通基盤として設計される。プロジェクト開発者や政策決定者、沿岸地域社会が判断材料として活用可能な形式を目指し、今後24カ月間で試作・検証を行う。
Ocean Visions最高経営責任者(CEO)のブラッド・アック氏は「Fugroは環境影響評価やフレームワーク設計、洋上モニタリングで深い専門性を有する。今回の基盤整備を託すには最適なパートナーだ。mCDRを本格導入するには、“安全”と“有効”の二重の試練を乗り越えねばならない」と述べた。
Ocean Visionsは2027年夏をめどに、広く活用可能な最終版EIAFを公開する計画だ。ドラフト段階では一般からの意見募集も行い、地理的多様性や公平性を確保する構成とする。
今回の枠組みは以下の特長を備える。
- 海洋生態系や沿岸住民への潜在的悪影響を特定
- 最小化する設計
- 公開型の対話促進および意見集約メカニズム
- 提案されたmCDR技術への順守構造の明文化
国際的には、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「大規模な炭素除去の必要性」を指摘しており、その選択肢の一つとしてmCDRが注目を集めている。ただし、実装前には科学的な評価と社会的な信頼形成が不可欠であり、Ocean Visionsの取り組みはその前提条件を整える試みといえる。
EIAFの完成により、mCDRに関する政策形成や研究許認可の判断が体系化されることが期待される。Ocean Visionsは並行してmCDR関連のデータベース整備も進めており、今後の国際議論に一層の影響を及ぼす見通しだ。
参考:https://oceanvisions.org/news-ocean-visions-to-develop-environmental-impact-assessment-framework-for-mcdr-research/