2025年10月29日、千葉県木更津市に新会社「エナウム株式会社(ENAUM Co., Ltd.)」が設立された。同社は25年に及ぶ研究開発で培った水素ガス化技術を基盤に、都市ゴミや太陽光パネル、災害瓦礫、下水汚泥などあらゆる廃棄物を、分別なしで持続可能な航空燃料(SAF)や水素エネルギーへ転換する独自システムを実用化する。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンが象徴した「廃棄物から動力を得る夢」が、現実の脱炭素社会で再現されつつある。
廃棄物から「飛べる燃料」 1日10トンで約2,000LのSAF生成
エナウムの廃棄物エネルギー化(WTE)技術は、世界最高水準の水素濃度60%・CO濃度30%のガスを生成。これをFischer-Tropsch(FT)合成に利用し、1日10トンの廃棄物から約2,000リットルのSAFを製造できる。タール含有量は従来の約1/1000と低く、長時間連続運転も可能だ。
40フィートコンテナサイズの小型設備で現場処理ができるため、災害時の瓦礫処理や地方自治体の分散型エネルギー供給にも応用できる。能登半島地震のような災害時に、現場で廃棄物を即時処理しながら電力と燃料を供給する構想だ。
航空業界のSAF需要急増に照準 「脱炭素の鍵を地方から」
国際航空運送協会(IATA)は、2030年までに世界の航空燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げている。だが日本国内の製造体制は立ち遅れており、エナウムはこのギャップを埋める存在となる。
代表取締役CEOの早川昇氏は、「廃棄物をエネルギーに変えることで、地方が航空業界の脱炭素を支える時代が来る」と語る。同社は太陽光パネル廃棄問題・下水汚泥処理・林業残材活用など複数の社会課題を一体で解決し得る技術として注目されている。
カーボンクレジット創出で二重の収益化
同社のWTEシステムは、従来の焼却処理と比較してCO2排出量を約60%削減できる。削減分はJ-クレジット制度や国際市場でカーボンクレジットとして販売可能で、廃棄物処理収入に加え新たな収益源を生む。
これにより、自治体や企業は廃棄物処理費用を削減しつつ、クレジット収益で事業の持続性を高められる。
公的機関も認めた技術 25年の蓄積を事業化へ
母体となるマイクロ・エナジーの技術は、2003~2014年に経済産業省や環境省などの補助事業に採択。徳島県那賀町での実証試験では高濃度水素ガス(約60%)の安定生成を確認した。エナウムはこの実績を基に、特許取得済みの二段ガス化炉システムを中心に事業を展開する。
地域発・分散型SAFネットワークへ
2025年度は全国3〜5カ所でモデル事業を開始し、2027年度までに年間50カ所以上の導入を目指す。将来的には国内航空会社へのSAF供給体制を整備し、「地域資源から飛行機を飛ばす」循環型ネットワークを構築する構想だ。
また、インドネシアやベトナムなど廃棄物問題が深刻な新興国への技術輸出も視野に入れる。
「廃棄物が燃料に」社会インフラ企業へ
早川氏は次のように述べた。「デロリアンがゴミで動いたように、私たちは廃棄物からクリーンエネルギーを生み出す。25年磨いてきた技術を社会実装し、脱炭素と資源循環を両立する社会インフラを構築する。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000171730.html
 
							 
			 
		 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				