大日本印刷(DNP)は9月11日、九州大学発スタートアップのJCCLと、CO2分離回収事業で協業すると発表した。協業は10月から開始され、DNPグループの工場での温室効果ガス(GHG)排出削減や新規事業の開発を目指す。両社は低コスト・高効率なCO2回収技術を活用し、カーボンニュートラル実現に向けた社会実装を加速させる。
DNPは自社の環境ビジョン「DNPグループ環境ビジョン2050」に基づき、Scope1・Scope2のGHG排出量の実質ゼロ化を掲げている。協業では、JCCLが有する「固体吸収法」と「膜分離法」を組み合わせた分離回収技術を工場排ガスに適用し、2030年度から各拠点に導入する計画だ。両社はこのスキームを確立し、DNPの生産活動で排出される直接的GHGの削減につなげる。
さらに、JCCLの技術力とDNPの印刷技術を融合し、CO2分離装置やモジュールの量産化を推進する。これにより、回収効率の高度化と産業規模での普及を狙う。DNPグループのDNP科学分析センターも同技術を導入し、2025年10月からCO2吸収剤の性能評価や回収プロセスの実証試験を含む分析サービスを顧客向けに提供する。
日本政府は今年、GX2040ビジョンを閣議決定し、革新的な脱炭素技術の開発と普及を重視している。両社の協業はこの流れに呼応し、国内外の企業に向けたカーボンマネジメント支援の事業化にもつながる可能性がある。
今後はDNPの工場での排ガス由来CO2の削減に加え、他の製造業を含む企業に向けた新規事業の展開も検討されている。両社は「技術革新と社会実装の両立」を掲げ、2050年のカーボンニュートラル目標に寄与する構えだ。