岡山市に本店を置く中国銀行は2026年1月5日、J-クレジット制度を活用して顧客に環境価値を付与する新商品の取扱いを開始した。対象となるのは法人向けの「ちゅうぎんJ-クレジット預金」および「SDGs私募債『オフセット型』」の2種類で、地域における経済と環境の循環への貢献を目的としている。
同行は、中四国地方の森林管理から創出されたカーボンクレジットを活用することで、地方銀行として地域脱炭素化の加速を支援する方針を鮮明にした。
法人向け定期預金である「ちゅうぎんJ-クレジット預金」は、募集総額100億円、1法人あたり5,000万円以上を一口として募集を開始した。預入期間は1年で、満期時に元本に応じて当行指定のJ-クレジットによるCO2排出のオフセット特典が付与される仕組みである。
一方の「SDGs私募債『オフセット型』」は、発行金額3,000万円から受け付け、発行企業には特典として環境価値が付与される。私募債においては、預金商品とは異なり、岡山県、島根県、愛媛県などの地域に根ざした森林吸収クレジットの中から、企業自らがオフセット対象を選択できる点が特徴となっている。
今回の取組みの背景には、環境価値の創出支援および販売において国内有数の実績を持つバイウィルとの業務提携がある。同行は2024年1月の業務提携開始以降、同社とともにカーボンクレジットの流通を促進し、地域の脱炭素経営を多角的に支援してきた。
今回の新商品投入により、J-クレジットの創出者である森林管理者への資金還流を促し、中四国地方における持続可能な森林管理と経済活性化の両立を目指す構えだ。
ちゅうぎんフィナンシャルグループは、今後も地域の脱炭素社会の実現に向け、多様な金融サービスの開発と提供を継続すると表明している。J-クレジット制度を通じた資金循環の構築は、企業の脱炭素対応だけでなく、地域の環境資源の価値最大化に直結する重要な施策となる。今後は、付与されるクレジットのラインアップ拡充や、企業のニーズに応じた最適なオフセット手法の提案が焦点となる見通しである。
これまで日本のカーボンクレジット市場は、クレジットを「創出する地方」と「購入する大都市圏の企業」という二極化が課題となっていた。
しかし、本取組みのように地銀が媒介となり、中四国地方の森林クレジットを同地域の法人が預金や債券を通じて活用する仕組みは、炭素価値の「地域内循環(地産地消)」を確立するモデルケースといえる。
特に注目すべきは、中小企業にとってハードルの高いJ-クレジットの調達とオフセット手続きを、預金や私募債という「既存の金融実務」にパッケージ化した点だ。これにより、専門知識が乏しい企業でも容易に脱炭素経営に参画できる環境が整った。
今後、他の地方銀行でも同様の「環境価値付加型金融商品」の展開が加速し、地域経済と環境価値がより密接に結びつく時代へと突入するだろう。


