CORSIA Phase-1適格カーボンクレジット確保 カーボントレードが国際航空向け供給を本格化

村山 大翔

村山 大翔

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供給逼迫が迫る2024〜2026年義務期間 LoA発行済みクレジットを先行確保し、航空会社向け安定供給体制を構築

東京を拠点とするカーボントレードは2026年3月3日、CORSIAのPhase-1(2024〜2026年)適格要件を満たすカーボンクレジット10,000トンを現物取得したと発表した。

ゴールドスタンダード(Gold Standard)で発行されたこのカーボンクレジットは、レジストリ上の同社管理口座で保有済みであり、さらに次ロット10,000トンの発注も開始。合計20,000トン規模の供給体制が稼働段階に入った。

義務履行の「資格証明書」 LoA発行済みが示す厳格要件への対応

CORSIA Phase-1が通常のボランタリーカーボンクレジット市場と根本的に異なる点は、カーボンクレジット1件ごとにホスト国政府が発行する承認書(LoA:Letter of Authorization)とパリ協定第6条に基づく「対応調整(Corresponding Adjustment)」の双方が必須とされる点にある。

これはパリ協定の文脈でダブルカウントを防ぐための国際ルールであり、要件を満たすカーボンクレジットは市場全体においても限定的な状況だ。

今回カーボントレードが取得したのは、アフリカ・マラウイにおけるバイオマスエネルギー保全プログラム(GS ID:11911、プロジェクト:GS11677・GS11902)のヴィンテージ2021年のカーボンクレジットである。同プロジェクトは調理用薪の効率化による排出削減と地域社会へのコベネフィットを兼ね備えており、ゴールドスタンダード認証の「環境・社会の二重基準」を体現するものだ。

供給逼迫が迫る市場 現物保有という「実弾」の意味

市場分析ではPhase-1期間(2024〜2026年)における適格カーボンクレジットの供給逼迫がすでに指摘されている。CORSIA義務履行の期限は2028年1月であり、各国航空会社は3年間の排出量増加分に相当するカーボンクレジットをその時点までにキャンセル(償却)しなければならない。義務の総量は、2019年比で超過したCO2排出量に連動するため、コロナ禍後の旅客需要回復局面では需要が急増する構造にある。

カーボントレードが選択した「現物保有」戦略は、この需給逼迫リスクへの直接的な回答といえる。口約束や先物ではなく、レジストリ上で実際に保有・管理することで、引渡し確実性を最大化する手法であり、信頼性重視の大手航空会社の調達ニーズに合致する。

累計6億〜14億トン、数十兆円規模の需要を見据えたポートフォリオ拡充

業界推計によれば、CORSIA全体(Phase-1からPhase-2の2035年まで)を通じた適格カーボンクレジットの累計需要は6億〜14億t-CO2に達し、金額規模は数兆〜十数兆円に及ぶとされる。同社はこの中長期需要を見据え、ゴールドスタンダードに加え、すでに口座を保有するヴェラ(Verra)のVCS(Verified Carbon Standard)認証クレジットも含めた分散型ポートフォリオの拡充を進める方針を明らかにした。

供給先は日本の航空会社にとどまらず、CORSIA参加国の国際線を運航するグローバルエアラインへの供給も視野に入れる。契約設計から移転実務まで一貫して対応する体制も整備済みとしており、中堅・大手を問わずワンストップで対応できる専門商社としての差別化を図る。

日本の航空2社が義務履行に向けた本格的な調達を開始する前に、適格カーボンクレジットの現物在庫を先行確保したことは戦略的に注目に値する。Phase-1の需給逼迫が現実化すれば、カーボンクレジットの単価上昇は必至であり、早期現物保有はリスクヘッジと収益機会の両面で優位に働く。

また、LoAおよび対応調整の実務ノウハウを持つ国内仲介者の存在は、航空会社のコンプライアンスコスト削減にも直結する。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000103192.html