日本最大級のカーボンクレジット取引所を運営するCarbon EXは11月10日、英ロンドン拠点の独立系カーボンクレジット格付会社シルベラ(Sylvera)と戦略的パートナーシップを締結したと発表した。両社は、シルベラの評価データをCarbon EXの取引基盤に統合し、カーボンクレジットの品質・リスクを可視化することで、日本市場における透明性と信頼性の新たな基準を確立する。
日本市場に国際的評価基準を導入
提携により、シルベラが世界で展開するカーボンクレジット格付データがCarbon EXのプラットフォームに統合される。これにより、企業や投資家は各クレジットの環境的完全性やリスクをリアルタイムで確認できるようになる。取引参加者は、より精緻なデータ分析に基づき、高品質なクレジットを選定できるようになる見通しだ。
Carbon EXは、これまで日本企業・自治体・プロジェクト開発者に対し、ボランタリークレジットやJ-クレジットなどの取引支援を行ってきた。今回の提携により、従来は相対取引中心だったカーボンクレジット売買を、より透明で信頼性の高い市場取引へと進化させる。
「ゴールドスタンダード」構築への意欲
シルベラの共同創業者兼CEO、アリスター・フレイ氏は「日本は世界でも最も洗練されたカーボンクレジット市場の一つであり、完全性と透明性の両立が求められている。Carbon EXとの協業により、“ゴールドスタンダード”となる市場基盤を築く」と述べた。
一方、Carbon EXの共同代表取締役の陰山貴之氏は「2050年カーボンニュートラル実現に向け、日本市場は今まさに転換期にある。シルベラの評価力と当社の取引基盤を融合させ、高品質クレジットが安心して流通する市場を実現する」と語った。
信頼性と透明性を求める市場の成熟
日本では、すでに1,500社以上がSBT目標を設定し、政府もJ-クレジット制度の拡充を進めている。一方で、カーボンクレジット市場には品質のばらつきや情報の非対称性が課題として残る。今回の提携は、こうした課題の解消と市場の信頼性向上を目的とする。
シルベラとCarbon EXの役割
シルベラは、人工衛星データやAI解析を用いてプロジェクトの炭素吸収量や追加性、永続性などを科学的に評価する企業。企業や投資家は同社の格付をもとに、クレジット購入先のリスクを定量的に判断できる。
Carbon EXは、24時間・365日稼働するカーボンクレジット取引所として、国内外のボランタリークレジット、J-クレジット、非化石証書などを幅広く取り扱う。さらに、CO2排出量可視化クラウド「ASUENE」とも連携し、オフセットの追跡や報告支援も提供する。
日本市場の信頼基盤を再設計
今回の提携により、Carbon EX上で取引されるクレジットは、格付・評価・KYC審査を経て品質が担保される。これにより、企業が支払う資金が確実に気候変動対策プロジェクトに届く仕組みが整う。国際的品質基準の導入は、日本市場の国際競争力強化にもつながるとみられる。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000143261.html