農業副産物の炭素隔離をブロックチェーンで可視化、自然由来カーボンクレジットと農産物販売を統合
Casley Deep Innovations(以下、キャスレーDI)は2026年3月2日、山梨4パーミル協議会(令和7年度 4パーミル・イニシアチブ推進全国協議会研修会)において、「炭素循環×食の安心」で創る次世代農業エコシステム構想を発表した。
農業副産物から生成したバイオ炭による炭素隔離をJ-クレジット制度に接続し、農産物の高付加価値販売とDAOガバナンスで統合する、国内農業分野では先駆的なReFi(再生型金融)モデルだ。
農業×カーボンクレジット市場の構造的課題
企業の脱炭素経営の高度化に伴い、自然由来カーボンクレジットへの需要は国内外で拡大している。J-クレジット制度においても、農地土壌管理やバイオ炭施用を対象とした方法論の整備が進む一方、農家単独での申請・運用はコスト・専門性の両面でハードルが高い。キャスレーDIは、この構造的課題に対し、ブロックチェーンとDAOガバナンスを組み合わせたプラットフォームで応じた。
モデルの4つの柱
①バイオ炭による炭素隔離とJ-クレジット化
剪定枝・もみ殻・畜産副産物などの農業副産物を炭化処理することでバイオ炭を生成し、CO2固定量をブロックチェーン上に記録する。この仕組みは実質的にデジタル測定・報告・検証(dMRV)を農業現場に実装するものであり、データの改ざん耐性と透明性を担保する。取得したカーボンクレジットはJ-クレジット制度に基づき発行され、企業のカーボンオフセット需要に充当される。従来は廃棄コストであった副産物が環境価値へと転換される点が、本モデルの経済的核心だ。
②「脱炭素認証付き農産物」の流通モデル
DAO上には生産履歴・CO2固定量・流通履歴・品質スコアが記録される。消費者は購入する農産物が具体的に何トンのCO2を固定しているかをリアルタイムで確認でき、応援購入・ふるさと納税・会員制DAO参加を通じて、価格競争ではなくコベネフィット(Co-benefit)の訴求による差別化販売を実現する。
③企業向けカーボンオフセットDAO
企業はDAOを経由して自然由来カーボンクレジットを購入し、ESG・CSR活動に活用できる。特定農家や地域を指定した支援モデルにも対応しており、単なるカーボンクレジット購入を超えた地域農業への継続的関与が可能だ。購入したカーボンクレジットはリタイアメント処理まで一元管理され、ダブルカウントリスクの排除を図る。
④カーボンクレジット売買益の地域循環モデル
農家が得たカーボンクレジット売買益はDAOで共同管理され、バイオ炭化設備投資や次期炭素隔離プロジェクトへ再投資される。この内部循環構造により、外部補助金依存を低減しながら農業の持続可能性を高める設計となっている。
今後の展開
キャスレーDIは今後、自治体との実証事業推進、各種補助事業化、農林水産省が推進する炭素プラットフォームとの接続を視野に、段階的な社会実装を進める方針だ。測定・報告・検証(MRV)基盤の農業分野への普及という観点からも、本モデルの実証フェーズの動向は注目に値する。
J-クレジット制度における農業・バイオ炭系の方法論は整備途上であり、本モデルの実装可能性は制度設計の進捗に大きく依存する。日本企業のScope3削減目標が厳格化するなか、農業由来の自然由来カーボンクレジットは追加性と永続性の確保が信頼性の鍵となる。
DAOによるガバナンスがダブルカウント防止とリタイアメント管理に実務上どこまで対応できるか、実証段階での第三者検証の有無が市場評価を左右するだろう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000125312.html
