自然由来カーボンクレジットの信頼性向上を目指すスタートアップ、株式会社Archedaは10日、複数の国内ファンドを引受先とする第三者割当増資により、プレシリーズAラウンドの資金調達を実施したと発表した。今回の資金はdMRV(デジタル測定・報告・検証)ソリューションの開発加速と海外展開強化に充てる。
複数ファンドが参画、地銀系も支援
今回の出資には、ONEカーボンニュートラル1号投資事業有限責任組合(運営:ONE Innovators株式会社)や、MEイノベーション投資事業有限責任組合(運営:グローバル・ブレイン株式会社、三菱電機と設立)、北洋SDGs推進3号投資事業有限責任組合(北洋銀行・北海道共創パートナーズ)、札幌イノベーションファンド投資事業有限責任組合(株式会社DGインキュベーション)らが名を連ねた。
ONE Innovatorsの清水孝行ジェネラルパートナーは「自然資本のデータマネジメントでユニークな立ち位置を築ける」と述べ、成長への期待を示した。
衛星×AIで自然資本の可視化を高度化
Archedaは、森林・農地・マングローブなど自然由来プロジェクトに対して、AI解析と衛星データを活用したモダンなdMRV基盤を提供している。従来の人手依存・高コストな手法を置き換え、プロジェクトの客観性・透明性を飛躍的に高めるのが狙い。
これにより、以下の利点が得られるとしている。
- MRV関連コストの削減と業務効率化
- 客観的データによる属人性排除
- 横断的な比較可能性の確保
- データ蓄積によるプロジェクト最適化
さらに、衛星データを用いた森林資源量の推定や、伐採状況の把握といった自治体・林業向けの支援事業も展開。既に国レベルのバイオマスマップ構築にも関与しているという。
JAXA実証でも実績 国際標準化も視野に
Archedaは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)による実証プロジェクト「衛星データを活用した森林カーボンクレジット算定」にも参画。三菱電機と連携し、レーダ衛星「だいち2号」の活用を進めている。
三菱電機の松原公実上席執行役員は「同社の技術は当社との親和性が高く、衛星データ利活用事業におけるシナジー創出に期待している」と述べた。
グローバル展開に向けた人材強化へ
調達資金は、以下の用途に重点的に投じられる。
- リモートセンシング解析エンジニアの採用
- 事業開発・管理部門の体制拡充
- 解析エンジンの高度化とプロダクト開発加速
今後はアジアを起点に、自然資本評価のグローバルスタンダード化を視野に入れた展開を進める構え。代表取締役の津村洸匡氏は「アジア発の評価基盤を社会実装し、資金循環の仕組みを創出していく」と語った。
今後の焦点、アジアでの本格展開と制度連携
Archedaは既に複数のパイロットプロジェクトをアジア各国で実施中。今後は、国際認証スキーム(VCS、Gold Standard、JCM等)との制度整合や、各国政府・自治体とのパートナーシップ構築が焦点となる。