米カリフォルニア州に本社を置くエアキャプチャー(Aircapture)は9月24日、日本のコンクリート大手・會澤高圧コンクリート(AIZAWA)と連携し、福島県浪江町の研究開発拠点「RDMセンター」に直接空気回収(DAC)設備を導入すると発表した。同社にとって日本初の商業プロジェクトであり、完成は2025年末を予定している。
今回の取り組みは、日本国内で深刻化するCO2供給不足と調達不安定に対応するものだ。コンクリート生産には高純度CO2が必要だが、従来の副産物依存型の供給網は価格変動や輸送リスクを抱えていた。DACを現場に設置することで、AIZAWAは安定的かつ脱炭素型の供給源を確保できる。
AIZAWAは2022年に「aNET ZEROイニシアチブ」を立ち上げ、2035年までの業界全体のネットゼロ達成を掲げている。現在、55社の国内メーカーが参加し、CO2鉱物化やブロックチェーンによる削減量トラッキング技術の共同開発を進めている。
福島RDMセンターでは、大気から回収したCO2を製造工程で発生する排水に注入し、炭酸カルシウムを生成。それを再利用することで新たなコンクリートの原料とし、永久的な炭素固定につなげる。廃水と副産物を資源化するこのプロセスは、輸入原料依存の低減、コスト削減、建設産業のカーボンフットプリント低減を同時に実現する。
エアキャプチャーの創業者兼CEO、マット・アトウッド氏は「日本は常に産業革新の最前線にあり、AIZAWAは我々と同じビジョンを共有している。このプロジェクトは、大気中CO2が産業の新たな原料になり得ることを示すものだ」と述べた。
エアキャプチャーのDACはコンテナ型で、工場敷地内に迅速に導入可能だ。輸送による追加排出を伴わず、現場供給を通じて操業リスクを低減できる点が特長である。同社は北米、欧州、中南米、アジアでもプロジェクトを進めており、日本の福島拠点は「循環型ものづくり」の実証モデルとして注目される。
今後、2025年末の稼働を目指し、国内のコンクリート産業全体にDAC統合モデルが波及するかが焦点となる。
参考:https://www.reuters.com/press-releases/aircapture-launches-first-commercial-dac-facility-in-japan-2025-09-24/