ジンバブエ政府は5月上旬、ブロックチェーン技術を活用した国家カーボンクレジット登録簿を公開した。これにより、同国は世界で初めて、カーボンマーケット(炭素市場)における透明性と信頼性を担保するブロックチェーン基盤の国家制度を構築した国となった。
ジンバブエ環境・気候・野生生物省は、ドバイに拠点を置くA6 Labsと連携し、国内のカーボンクレジットを一元的に管理・取引できるブロックチェーンベースのカーボンレジストリを構築した。公式ウェブサイト(zicma.org.zw)上で公開されたこのプラットフォームは、すべてのクレジット発行・取引・償却履歴が改ざん不可能な記録として保持され、カーボンマーケットの健全な発展を支えるインフラとされる。
この取組は、2023年にジンバブエ政府が突如カーボンクレジット関連事業の再登録を義務付け、収益の50%を要求したことで国際的な信頼を損ねた過去への反省を踏まえたもの。今回の導入により、投資家や開発者に対して制度の透明性と予見可能性を提供することを目的としている。
併せて政府は「ジンバブエ炭素市場庁(ZICMA)」を新設し、プロジェクト登録とライセンスの付与を一元化。同庁による審査を通過した事業者のみが、登録簿上での活動を認められる仕組みとした。
同国のエブリン・ンドロヴ環境大臣は、「すべての取引は追跡可能で、真に検証可能なCO2削減を保証する。我々は自然資源を公正に貨幣化できるツールを手に入れた」と強調した。
このプラットフォームは、AIと地理空間技術を組み合わせた高度な設計により、詐欺防止や人的ミスの排除、カーボンクレジットの真正性確保に貢献する。また、簡便なユーザーインターフェースにより、地方の開発者や技術的リソースの限られた団体の参入障壁を下げることも狙いのひとつだ。
ジンバブエはこれまでアフリカで3番目に多くのカーボンクレジットを生産しており、今回の制度整備を通じて、ボランタリーカーボンマーケット(VCM)から国際的なコンプライアンスカーボンマーケットへの移行も視野に入れている。パリ協定第6条に準拠したこの仕組みは、気候金融の拡大、再エネや森林再生、地域雇用創出など、多面的なサステナビリティ推進にもつながると期待されている。
ジンバブエの先進的な制度導入は、アフリカ大陸における約60億ドル規模のカーボンファイナンスマーケットに対するアクセス拡大に向け、他国のモデルケースとなる可能性がある。