10月31日、炭素除去(CDR)技術を競う「XPRIZE Carbon Removal」を主催するXPRIZE財団とボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、最終選考に残った20社の戦略を分析した新報告書を公表した。報告書は、2050年までに年間60億〜100億トンの二酸化炭素(CO2)を除去するという目標達成に向け、各社が今後5〜10年でキロトン級からメガトン級の商業規模へ拡大するための「具体的な道筋」と「コスト低減策」を明らかにしている。
報告書によれば、CDR業界が直面する最大の課題は「技術的ブレークスルー」ではなく、「エンジニアリングと商業化の最適化」であると指摘している。既存技術を活用しつつ、いかにスケールを拡大し、コストを削減できるかが焦点となる。
最終候補に選ばれたのは、マティ・カーボン(Mati Carbon)、ネットゼロ(NetZero)、ヴォールテッド・ディープ(Vaulted Deep)、UNDOカーボン(UNDO Carbon)、プラネタリー(Planetary)、プロジェクト・ハジャール(Project Hajar)、アルカ(Arca)、スカイレニュ(Skyrenu)、ヒアールーム(Heirloom)、エブ・カーボン(Ebb Carbon)、キャプチュラ(Captura)、エアハイヴ(Airhive)、アプライド・カーボン(Applied Carbon)、ケルプ・ブルー(Kelp Blue)、タカチャール(Takachar)、ユアンチュ(Yuanchu)など、多様なCDR手法を展開する20社である。
これらの企業が共通して掲げる拡大戦略は、
- 将来技術の進化
 - スケーリング(規模拡大)
 - モジュール化
 - プロセス最適化
 - 代替収益源の確立
 
という「5つの内部成長レバー」に集約される。一方で、外部要因としては、資金調達コスト、サプライチェーン、物流、エネルギー、人材、水、土地など7つのリスク領域がコストと拡大性を左右する。
資金調達面では、プロジェクト債、クレジットリボルバー、リースバックといった多様な金融構造が検討されており、副産物の活用や企業間パートナーシップがリスク分散の鍵となる。報告書はまた、CDRの商業化を支えるエコシステム全体、具体的には原料供給者、部品メーカー、エンジニアリング・調達・建設(EPC)企業、物流事業者、運転事業者の成長も不可欠だと強調している。
XPRIZE財団とBCGは、これら20社の分析を通じて、CDR業界が「科学からスケールへ」と移行する段階にあると結論づけた。今後の成長には、オフテイカー(カーボンクレジット購入者)の戦略的関与や、投資家による長期的リスク管理を組み込んだ資金設計も求められるとしている。
この報告書は、CDRが地球規模での気候目標達成に向けて商業的成熟期へ進む上での「ロードマップ」を示すものであり、今後数年の動向が市場形成を左右する見通しだ。
参考:https://www.xprize.org/news/xprize-carbon-removal-bcg-report