カーボンクレジット市場インフラ最大手のエクスパンシブと気候ソリューション企業のブライトリーは、米国全土の食品救済ネットワークと連携し、食品廃棄物由来のメタン削減カーボンクレジットを新たにボランタリーカーボンクレジット市場に投入する。
ベラ(Verra)のVM0046方法論に基づく初の大規模発行として注目を集めている。
ブライトリーが開発した本カーボンクレジットは、余剰食品を埋立地への廃棄から転換し、メタン排出を回避することで創出される回避系カーボンクレジットである。対象となる食品救済活動は米国の郡の約97%をカバーする全国規模のネットワークに及ぶ。
メタンはCO2と比較して短期間で著しく強力な温室効果を持つことが知られており、埋立地での食品腐敗は地球温暖化係数(GWP)の観点からも重大な排出源となっている。本プロジェクトはこの点に直接対処するものだ。
使用されるのはベラのVM0046(食品廃棄物削減に関する方法論)であり、本規模での発行は世界初となる。測定・報告・検証(MRV)プロセスはブライトリーが主導する。
初回トランシェとして約25万トンのエクスアンテカーボンクレジット(最大50万トンへのスケールアップ可能性あり)が、エクスパンシブのCBLスポット取引所上にて見積依頼(RFQ:Request for Quote)方式で提供される。
また、本カーボンクレジットはビーゼロカーボン(BeZero Carbon)からAe(事前発行時)評価を取得しており、整合性の高さが第三者機関によっても裏付けられている。
特筆すべきは収益分配構造だ。カーボンクレジット販売で得られる収益の最大80%が食品救済組織に還元される設計となっており、フードシステムの持続可能性と気候変動対策を同時に強化するコベネフィット(Co-benefit)を持つ点が評価されている。
米国の食品廃棄は生産量の約40%、金額にして年間4,000億ドル(約63兆8,400億円)に上るとされる中、食料コストの上昇や公的支援プログラムの縮小が食品救済ニーズを高めており、本モデルの社会的意義は一層大きい。
フィーディング・アメリカ(Feeding America)の最高財務責任者ポール・ヘンリーズ氏は「食品救済活動の強化は、空腹に直面するコミュニティに栄養ある食を届けるための最も効果的な手段の一つ。このような取り組みはその活動拡大に資するものだ」と述べた。
エクスパンシブは環境コモディティ市場における世界最大のインフラプロバイダーであり、CBLスポット取引所は環境コモディティ取引プラットフォームとして世界最大規模を誇る。投資家にはブラックストーン・グループ、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックスらが名を連ねる。
エクスパンシブの上級副社長ラッセル・カラス氏は「CBLのRFQメカニズムは価格の透明性(プライスディスカバリー)を支援する。特に新たな方法論が市場に参入する局面においてこれは重要だ」と述べた。
ブライトリーは食品廃棄削減に特化した気候ソリューション企業。同社創業者兼CEOのアンディ・レビット氏は「Aレーティング付きのこの種初めてのカーボンクレジットを市場に届けられることを誇りに思う。排出削減と社会的インパクトを直接結びつける新たな気候ファイナンスのモデルだ」と語った。
食品廃棄由来のメタン削減カーボンクレジットは、日本においても廃棄物系プロジェクトへの関心が高まる中、注目に値するモデルケースである。特に収益の最大80%を現場の食品救済組織に還元する構造は、コベネフィット(Co-benefit)重視の調達方針を持つ日本企業にとってスコープ3対策として訴求力を持つ。
ベラのVM0046方法論が初の大規模商業化を迎えた点は、今後の自然由来・廃棄物系カーボンクレジット方法論の多様化を示す先行指標として、日本の排出量取引制度(ETS)設計や調達戦略を担う担当者が注視すべき動きだ。