米プロメテウス・ハイパースケール(Prometheus Hyperscale)、スピリタス(Spiritus)、キャスパー・カーボンキャプチャー(Casper Carbon Capture)の3社は、ワイオミング州でカーボンネガティブ型のデジタルインフラキャンパス「プロジェクト・キャスパー」を共同開発すると発表した。AIデータセンターの電力需要を賄いつつ、直接空気回収(DAC)などの炭素除去(CDR)技術を導入する大規模事業で、2026年に第1段階の稼働を予定している。初期投資額は5億ドル(約760億円)に達し、建設期には数百人規模の雇用を創出する見通しだ。
プロジェクト・キャスパーは、最大1.5ギガワット(GW)のIT電力容量を段階的に構築する計画で、ロッキー山脈地域最大級のAI向けデジタルインフラ拠点となる。プロメテウスは独自の帯水層冷却技術を用いた高密度データホールを設計・資金提供し、冷却用水を消費しない省エネ型構造を採用する。
スピリタスは、天然ガスを燃料とする新プラットフォーム「オーチャード・パワー(Orchard Power)」を導入し、発電と同時に発生源由来のCO2を回収する設備を備える。また、排熱を利用したDACシステムを組み合わせ、事業全体で炭素マイナスを実現する。
キャスパー・カーボンキャプチャーは、ナトロナ郡およびコンバース郡におけるCO2貯留井戸の許認可を活用し、回収したCO2を永続的に地中貯留する。さらに同社は土地と通行権も提供し、プロジェクト全体のインフラ基盤を担う。
プロメテウス・ハイパースケールの創業者兼CEOトレントン・ソーノック氏は「スピリタスおよびキャスパー・カーボンキャプチャーとの提携により、持続可能なデジタルインフラの未来を形にする」と述べた。
スピリタスの共同創業者兼CEOチャールズ・カディウ氏は「AI企業は電力を待てない。オーチャード・パワーは、信頼性が高く価格競争力のある炭素マイナス電力を即座に提供する」と強調した。
また、キャスパー・カーボンキャプチャーの共同創業者ジェス・フォシー氏は「世界水準のパートナーとともに、地域資源を活かしながらコミュニティと環境への責任を果たす」と語った。
ワイオミング州はこれまでも炭素回収・貯留(CCS)やDAC実証に積極的で、今回のプロジェクトは州が掲げる「エネルギーと気候の両立」戦略の象徴的事例となる。州政府は税収増と雇用創出効果を期待しており、同州がAIインフラとCDR技術の両面で全米をリードする可能性が高い。
初期稼働は2026年を予定し、完成後は長期的に技術職の雇用を維持するほか、地元自治体に新たな公共収入をもたらすとされる。炭素マネジメントを中核に据えたデジタルインフラの実証として、国際的な注目を集めることになりそうだ。