スイスKliK財団「2026年が正念場」 ITMO承認のボトルネック解消に自信

村山 大翔

村山 大翔

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スイスの温室効果ガス排出相殺義務を代行するKliK財団(KliK Foundation)は、2026年をパリ協定第6条に基づく「ITMO(国際的に移転される緩和成果)」調達の決定的な年と位置づけ、承認プロセスの停滞を解消する方針を明らかにした。

同財団は現在、約60件のプロジェクトを計画しているが、両国政府の承認を完了しているのはわずか10件に留まる。しかし、これまでの実務経験の蓄積により、来年にはポートフォリオの安定的な運用が可能になると強気の見方を示している。

排出相殺義務の急増と「ITMO」へのシフト

スイスでは法律に基づき、化石燃料輸入業者に対して国内排出量の一部を相殺する義務を課しており、その履行をKliK財団が担っている。同財団の2026年における相殺義務量は415万t-CO2eに達し、2025年の352万トンから大幅に増加する見通しだ。

これまで、この義務は主にスイス国内の排出削減プロジェクトによる「国内証明書」で賄われてきた。しかし、2026年からはその主軸が海外プロジェクトから得られるITMOへと移行する。パリ協定第6条2項に基づくこの仕組みは、二重計上を防ぐための「対応調整」が必要となるなど、政府間の高度な合意形成が不可欠となる。

承認プロセスの「ボトルネック」解消が鍵

現在、KliK財団が抱えるプロジェクト・パイプラインのうち、二国間合意に基づきスイスとホスト国の双方から最終承認を得ているのは約6分の1に過ぎない。約32件のプロジェクトが調達契約(MOPA)の段階に達しているものの、政府による正式承認が遅れる「承認ボトルネック」が課題となっていた。

財団は、2030年までに累計2,000万トンのITMOを確保する目標を掲げているが、現状のペースでは500万トンの不足が生じるリスクも指摘されている。スイス政府は2030年までのITMOの平均価格を1トンあたり約44ドル(約6,800円/1スイスフラン=約200円換算で35フラン)と想定しており、民間資金の投入によるパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)を通じた新たな調達ルートの開拓も進めている。

多角化する二国間連携と将来展望

スイスはITMO調達に向けた二国間協定のネットワークを急速に拡大している。2026年1月にはザンビア(Zambia)との合意が発効したほか、モロッコでは500MWp規模の屋上太陽光発電プログラム(Solar Rooftop 500)が始動。ガーナでは電動バイク(e-bike)の普及を通じた削減プロジェクトが進行中だ。

国内でも、木材製品による炭素貯蔵やバイオ燃料、貨物輸送の鉄道シフトなど、CDR(炭素除去)に近い性質を持つプロジェクトが2024年だけで約130万トンの削減に貢献している。KliK財団は、これらの国内外の知見を統合し、2026年中に残る50件のプロジェクト承認を勝ち取ることで、パリ協定下での先駆的なカーボンクレジット市場の構築を目指す

スイスの事例は、JCM(二国間クレジット制度)を推進する日本企業にとって極めて重要な先行指標となる。2026年を境に国内オフセットから「第6条クレジット(ITMO)」へ舵を切るスイスの戦略は、カーボンクレジットの「量」だけでなく「政府承認のスピード」が事業リスクに直結することを示唆している。特にITMO価格が1トンあたり約6,800円と高止まりする予測は、日本のJ-クレジットやJCMの価格形成にも影響を与えるだろう。

参考:https://www.klik.ch/en/news/news-article/2026-a-decisive-year-for-the-klik-foundation/