水資源を基盤としたカーボンクレジット事業を展開する米バリディー(Virridy)は、米国立科学財団(NSF)からの最大500万ドル(約7億5,000万円)の契約と、建設大手M.A.モーテンソン(M.A.Mortenson)からの500万ドル(約7億5,000万円)の出資を獲得し、合計1,000万ドル(約15億円)の資金調達を発表した。民間と公的資金の両面からの支援により、水資源の保全と炭素削減を両立させる革新的事業の展開を加速させる狙いだ。
今回の調達資金は、アフリカ諸国での飲料水インフラ整備、トルコでの精密灌漑による農業排出削減、米国内での流域修復を中心に、同社の世界的な水資源関連炭素除去(CDR)プログラムを拡大する原動力となる。
バリディーのエバン・トーマス最高経営責任者(CEO)は「カーボンファイナンスとデジタル監視技術、現地パートナーシップを組み合わせることで、清浄な水の提供、農業生産性の向上、生態系保護、排出削減を同時に実現できる」と述べた。
同社はケニア、ルワンダ、コンゴ民主共和国、マダガスカルで飲料水インフラを展開中で、2030年までに4百万人以上に水を届け、100万トン以上のカーボンクレジットを創出する見込みだ。従来の薪や化石燃料による煮沸を不要にすることで、森林破壊や室内汚染を防ぎ、温室効果ガス(GHG)削減に直結する。
農業分野では、世界最大の精密灌漑企業オルビア・ネタフィム(Orbia Netafim)と提携し、土壌炭素隔離と一酸化二窒素(N2O)削減を狙うプロジェクトを2025年にトルコで開始。数万ヘクタール規模への拡張を視野に入れる。米国では「流域炭素」事業を展開し、自然由来の手法で炭素市場と水質規制をつなぐ新たな仕組みを模索する。
今回のNSF支援は「未来の水システム」プログラムの一環で、研究成果を社会実装へと橋渡しするもの。モーテンソンはこれまでに同社の炭素クレジットを2百万ドル分先行購入しており、今回の追加投資で関与を強めた。同社のマーク・モーテンソン氏は「社会的・環境的便益を伴う高インパクト投資だ」と評価した。
バリディーは2007年に国連クリーン開発メカニズム(CDM)を用いた水処理由来のカーボンクレジット創出に世界で初めて成功した実績を持つ。今回の資金調達により、カーボンクレジット市場を梃子に水資源問題と気候変動対策を統合するモデルの拡大に弾みがつきそうだ。