ベトナム、追加100万トンのカーボンクレジット移転を承認 「森林由来の削減分を世界銀行へ」

村山 大翔

村山 大翔

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ベトナム政府は9月4日、北中部地域の植林によって創出された二酸化炭素(CO2)削減量100万トン分のカーボンクレジットを、世界銀行グループの国際復興開発銀行(IBRD)に移転することを承認した。これは2020年に農業農村開発省とIBRDが締結した排出削減支払い契約(ERPA)の一環で、当初の目標を上回った余剰分からの追加取引である。移転額は約500万ドル(約7億4,000万円)と見込まれる。

今回の移転は、初期段階での10.3百万トン削減に加え、2018~2019年に実際に達成した削減量が契約を上回ったことで生じた5.9百万トンの余剰から実施される。IBRDがこのうち100万トンの購入を提案したことを受け、農業農村開発省が2024年に首相へ承認を求めていた。

契約条件に基づき、移転されるクレジットの約95%はベトナムに返還され、パリ協定の下で提出する国別削減目標(NDC)の達成に活用される。残る5%分がIBRDの購入対象となり、ベトナムは対価を得る仕組みだ。

得られる資金は、森林所有者や地方自治体、天然林を管理する組織に配分され、さらに5つの対象省(タインホア、ゲアン、ハティン、クアンチ、トゥアティエンフエ)における森林保護団体や地域住民の生計向上活動にも充てられる。

ベトナムはすでに初期契約で総額5,150万ドル(約76億円)の収入を得ている。今回の追加取引で残る4.9百万トンの余剰分は自国のNDC履行に留保する方針で、政府は「追加購入者を見つけるのは難しく、時間の経過とともにクレジット価値は下落する」と説明している。

今後、森林由来クレジットの活用がどこまでベトナム国内の気候目標達成と地域社会の利益に直結するかが注目される。

参考:https://vir.com.vn/vietnam-to-transfer-additional-one-million-carbon-credits-to-world-bank-135646.html