Verra、ODS破壊方法論を大幅改定 HFCを対象に追加し「キガリ改正」に完全準拠

村山 大翔

村山 大翔

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ベラ(Verra)は2025年12月15日、オゾン層破壊物質(ODS)およびハイドロフルオロカーボン(HFC)の破壊に関する改定方法論「VM0016 v2.0」を正式に発表した。

今回の改定により、VerraはODSに加え、特定の発生源からのHFC破壊をカーボンクレジット創出の対象とする初の主要プログラムとなり、国際的な環境条約であるモントリオール議定書の「キガリ改正」への準拠を明確にした。

HFCおよび未処理フォームを新規対象へ

今回発表された「VM0016 v2.0」は、製品(冷媒、発泡剤、消火剤、噴射剤など)から回収されたODSやHFCを破壊することで、大気中への放出を防止し、温室効果ガス(GHG)削減量を定量化するものである。

旧版(v1.1)からの最大の変更点は、モントリオール議定書のキガリ改正との整合性を図った点にある。キガリ改正は、強力な温室効果ガスであるHFCの生産・消費の段階的削減を義務付ける国際合意だ。Verraはこの動きに合わせ、方法論の適用範囲を以下のように拡大した。

  • ハイドロフルオロカーボン(HFC)の追加
  • 未処理フォーム(Intact foams)内のガス
  • 消火剤および噴射剤
  • 特定の条件下での在庫(ストックパイル)にあるHCFCおよびHFC

また、付随する追加性評価モジュール「VMD0048 v2.0」も同時に更新され、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が、自動的に追加性ありとみなされる活動のポジティブリストに含まれることとなった。

移行期間と2026年末の期限

Verraは、プロジェクト開発者に対して即時の新バージョン適用を認める一方、既存プロジェクトへの移行期間も設けている。

旧版である「VM0016 v1.1」および「VMD0048 v1.0」は、2027年1月1日をもって無効となる。これに伴い、旧版での新規登録やカーボンクレジット期間の更新を目指すプロジェクトは、2026年12月31日までに申請を完了させる必要がある。既存プロジェクトは、次回のカーボンクレジット期間更新時に最新版への移行が義務付けられる。

本改定の開発にあたっては、冷媒回収・破壊を手掛けるエイ・ガス(A-GAS)およびトレードウォーター(Tradewater)が資金を提供し、技術開発はICFインターナショナル(ICF International)が主導した。

VCMにおける「高GWPガス」の価値再定義

今回のニュースは単なる技術的な改定にとどまらず、ボランタリーカーボンクレジット市場と国際規制の境界線がより密接にリンクし始めたことを示唆している。

HFCなどの代替フロン類は、二酸化炭素(CO2)の数百倍から数千倍という極めて高い地球温暖化係数(GWP)を持つ。そのため、これらを適切に管理・破壊するプロジェクトは、比較的少量のガス処理で膨大な量のカーボンクレジットを生み出すポテンシャルを秘めている。

Verraがキガリ快晴に準拠したことは、カーボンクレジットの品質保証を強化する動きの一環だ。日本国内ではフロン排出抑制法により厳格な管理が求められているが、途上国等での日本企業の拠点や、JCM(二国間クレジット制度)のような枠組みにおいて、この新しい方法論に基づいた高効率なカーボンクレジット創出の機会が拡大する可能性がある。

特に、これまで処理コストがネックとなっていた「断熱材フォーム」等の回収・破壊に経済的インセンティブが付与された点は、廃棄物処理業界にとっても注目すべき商機と言えるだろう。

参考:https://verra.org/verra-releases-revised-methodology-for-the-destruction-of-ozone-depleting-substances-and-hydrofluorocarbons/