Verra、カーボンクレジットをScope3削減に使用するためのフレームワーク「Scope 3 Standard プログラム」を開発

村山 大翔

村山 大翔

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Scope3削減に新たな道筋、企業のバリューチェーン全体の気候行動に信頼性と透明性をもたらす新プログラムが始動

カーボンマーケットの国際認証機関 Verraは、企業のScope3排出を削減・報告するための新たな枠組み「Scope 3 Standard プログラム」の構築に向け、最初の公開コンサルテーションを開始した。2025年3月6日から4月21日まで実施されたこのコンサルテーションは、プログラム文書の明確性、実現可能性、包括性に対するフィードバックを収集することを目的としている。

Scope3削減の「空白地帯」に対応

Verraは、これまでのカーボンクレジット制度では、Scope3排出削減の信用性や整合性を担保する標準的な枠組みが欠如していたとし、今回のS3Sプログラムはこうした市場のギャップを埋めるべく、次のような主要機能を備えているとした。

  • 科学的根拠に基づいた標準化された排出量算定方法
  • 第三者機関による厳格な検証(Assurance)体制
  • 対象プロジェクトの温室効果ガス(GHG)アウトカムの認証および登録
  • 介入単位(Intervention Units, IUs)の発行と管理を可能にする透明なレジストリ

プログラム文書の特徴

コンサルテーションの対象となった文書には、以下が含まれている。

  • S3S Standard v0.1:プロジェクト実施者や検証機関向けの基本ルール(VCSスタンダードに類似)
  • 定義集 v0.1:S3S関連用語の明確化と整理
  • VCS方法論適用ガイダンス v0.1:既存VCS方法論をS3Sに適応させるための技術的解説
  • 統合ガイダンス v0.1:企業の排出報告にS3Sアウトカムを活用する方法に関する手引き

また、以下の概念的枠組みについても意見を募った。

  • 年次検証の柔軟性を確保するAssurance Framework
  • 永続性リスクへの対応を組み込んだリムーバルと非永続性の枠組み
  • 測定頻度の緩和に向けたパラメータ測定の簡素化アプローチ

実証事例と今後の展開

S3Sはすでに複数の実証プロジェクトでテストが進行中だ。たとえば、3DegreesやCarbiCreteなどが参加するフルパイロットでは、農業、建設、製造業分野でのS3S準拠の方法論が実装されている。また、Patagoniaなどの大手企業も技術アドバイザーを含めたテストに関与している。

今後は、パブリックコメントの反映を経て、2025年末までに初期版の公開が予定されている。Verraはその後、専門家レビューやさらなる公開コンサルを経て、2026年の正式ローンチを目指すとしている。

Scope3介入がもたらす新たな気候ファイナンス機会

S3Sプログラムは、企業によるScope3排出の削減活動にクレジットとしての信用性を付与し、バリューチェーン内での共投資・共同主張(co-claiming)を可能にする。これは、従来の「削減はするが報告できない」状況からの脱却を意味し、企業の脱炭素戦略を市場と接続する重要なインフラになる可能性がある。

Verraはこの新標準を通じて、「排出削減の証拠を伴う信頼ある報告」ができる企業を増やし、Scope3排出に対する投資の呼び水とすることを狙っている。

参照:https://verra.org/public-consultation-on-scope-3-standard-program/