米国のカーボンクレジット基準管理団体ベラ(Verra)は11月24日、ペルーにおける「計画外の森林減少」に関する割り当てリスクマップの最終版を公開した。これにより、同国で活動するプロジェクト事業者は、ベラの新手法「VM0048」に基づく活動データの取得申請が可能となり、厳格化された基準下でのベースライン設定とクレジット登録手続きが本格化することになる。
新手法「VM0048」の実装が加速
今回公開されたのは、ベラの管理する認証基準「VCS(Verified Carbon Standard)」におけるREDD(森林減少・劣化の抑制)プロジェクト向け新手法「VM0048(v1.0)」および関連モジュール「VMD0055(v1.1)」に準拠したデータである。
従来、森林保全プロジェクトにおける温室効果ガス削減量の算出根拠となる「ベースライン」は、プロジェクト事業者が個別に設定していたため、過大評価のリスクが指摘されていた。新手法であるVM0048では、ベラ側が提供する管轄区域単位(Jurisdictional)のデータを基に各プロジェクトへ森林減少リスクを割り当てる方式を採用しており、今回のマップ公開はペルーにおけるこの新ルールの適用開始を意味する。事業者はこのVMD0055準拠データを使用することで、プロジェクトのベースラインを正確に設定し、削減量を算出することが可能となる。
主要国のデータ公開スケジュールを更新
ベラは今回の発表に合わせ、他の主要な管轄区域におけるデータ公開スケジュールの更新も行った。
すでにブラジルのパラ州およびマットグロッソ州については最終版のリスクマップが公開済みである。これらに続き、ブラジルのアクレ州、アマゾナス州、ロンドニア州、およびカンボジア、グアテマラ、コロンビア、コンゴ民主共和国(マイ・ンドンベ)については、2026年第1四半期末までに最終データが公開される見通しだ。これらの地域は、VM0048およびVMD0055の下で多数のREDDプロジェクト登録が見込まれているホットスポットである。
開発状況を「Band」で可視化
データの提供時期に関する予測可能性を高めるため、ベラは管轄区域ごとのデータ開発状況を6段階の「Band(バンド)」に分類して管理する新方式を導入した。
- Band 1: VMD0055準拠データおよび最終的なオープンアクセスデータが利用可能。
- Band 2: 暫定データが利用可能で、準拠データの提供時期に関する詳細情報あり。
- Band 3〜4: 今後6〜15ヶ月以内に暫定データが利用可能になる見込み。
- Band 5〜6: それ以降の開発、または優先順位付け待ち。
この分類は、プロジェクト開発に関する調査結果や既存REDD+プロジェクトの分布、ステークホルダーとの対話に基づいて決定されており、需要の高い地域でのデータ整備を優先的に進める狙いがある。国や地域は、リスクマップの開発進捗に応じて上位のバンドへ移行し、ベラはその変更を定期的に更新するとしている。
次期データプロバイダーの選定へ
今後の展開として、ベラは次のラウンドの活動データ(AD)、森林被覆ベンチマークマップ(FCBM)、および割り当て森林減少リスクマップを作成する「データサービスプロバイダー(DSP)」の選定作業を最終段階に進めている。
これにより、ベースラインの有効期限(BVP)が数年以内に切れる既存の管轄区域や、新たな管轄区域向けのデータ整備を持続的に行う体制を強化する方針だ。ベラによる中央集権的なデータ提供体制の確立は、REDD+クレジットの品質と信頼性を担保する上で重要な転換点となる。
参考:https://verra.org/verra-releases-final-deforestation-risk-maps-for-peru-updates-timetable-for-remaining-jurisdictions/
