国際的なカーボンクレジット認証機関のVerraは、ジンバブエなどで展開された森林保全プロジェクト「カリバREDD+」の炭素会計に関する精査を完了し、過剰に発行されたカーボンクレジット約1,522万トン分を取り消すと発表した。併せて、プロジェクト主体のカーボン・グリーン・インベストメンツ(Carbon Green Investments、CGI)に対し補償を求める方針を示した。
同事業はアフリカ最大規模の森林減少回避型のREDD+案件として注目を集めたが、2023年10月に米誌「ニューヨーカー」の報道を契機に運営上の不正疑惑が浮上し、Verraは登録を一時停止していた。
Verraのマンディ・ランバロス最高経営責任者(CEO)は「カリバ事業は規模、歴史、複数法域にまたがる複雑性のいずれにおいても前例がなかった」と述べ、調査が長期化した背景を説明した。
炭素会計レビューの結果
Verraによると、カリバ事業では累計で4,195万5,689トンの排出削減・吸収量(ERR)が認証され、このうち2,682万2953トンが取引可能なカーボンクレジット(VCU)として発行済みだった。しかし、参照地域の実際の森林減少は当初予測を大幅に下回り、約1,522万トン分の「過剰発行」が判明した。
調査結果に対して、Verraは以下の措置を講じる。
- CGIに対し、過剰発行分1,522万トンの補償を要請(うち1,032万トンは既に償却済み、489万トンは流通中)。
- 登録上に残る未発行クレジット1,008万トンを永久に取消。
- リスク対策として積み立てられたバッファプール分504万トンも全量取消。
- 今後は衛星ベースの長期モニタリングシステムを用いて追加的な森林減少を監視し、必要に応じ他の案件バッファから取消を行う。
品質管理レビューと残る課題
炭素会計とは別に、Verraは独立検証機関(VVB)に対し以下の点の追加調査を求めている。
- プロジェクト区域内でのトロフィーハンティング実施と規範違反の有無
- クレジット収益の資金流れと地域コミュニティへの利益配分の透明性
- ガバナンス構造と説明責任の確保
VVBは今後90日以内に回答を提出する必要がある。
市場への影響
今回の決定は、REDD+型クレジットの「過剰計上」リスクを浮き彫りにし、カーボンクレジット市場全体の信頼性に波及する可能性がある。Verraは「環境完全性の確保を最優先する」と強調し、透明性の高い運営姿勢を打ち出した。
カリバ案件を巡る審査の帰趨は、アフリカ発の大規模森林保全プロジェクトの将来に加え、国際的なカーボンクレジット購入者の信頼回復に直結する。VVBの回答期限となる12月下旬が、次の焦点となる。
参考:https://verra.org/verra-acts-on-kariba-project-cancels-excess-credits-advances-independent-review/