仏鋼管大手ヴァローレック(Vallourec)とブラジルのエンジニアリング企業シンギュラー・ソリューションズ(Syngular Solutions)は2026年5月21日、ブラジルでのBECCSおよびCCUS事業の推進に向けた覚書を締結したと発表した。
シンギュラーが持つ地質貯留の評価とプロジェクト開発の知見に、ヴァローレックの鋼管・ケーシング技術を組み合わせ、事業の初期段階から顧客に関与する枠組みを構築する。
両社の協業は、CO2の回収から地中での地質貯留までを対象とした、拡張可能な枠組みモデルの構築を主眼とする。シンギュラーが地質貯留の評価とプロジェクト開発を担い、ヴァローレックが鋼管・ケーシングなどの産業技術を提供する。貯留先は枯渇した油ガス田や深部塩水層であり、地中への恒久的な固定を前提とする。
ヴァローレックは本件を、拡大する炭素管理・エネルギー転換市場での事業基盤を広げる戦略の一環と位置づける。協業を通じて、顧客のプロジェクト設計の初期段階から技術的知見を提供できるとしている。
新エネルギー部門を統括するベルトラン・ド・ロタリエ(Bertrand de Rotalier)は、本協業がCCUS開発の最前線にヴァローレックを位置づける取り組みだと述べた。
ヴァローレックとシンギュラーの経営陣は、ブラジルがBECCS事業の成長に特に適した環境にあると説明する。大規模なエタノール産業が、回収しやすい高濃度のCO2源を供給する。加えて、枯渇した油ガス田や深部塩水層など、長期貯留に適した地質構造が豊富に存在する。
バイオマス由来のCO2を回収・貯留することで、処理プロセス全体として大気中のCO2を正味で取り除くネットネガティブが実現する。シンギュラーはエタノール業界と連携し、地質貯留層のCO2貯留ポテンシャルの実証を進めているという。
南米のチューブ事業を統括するアンドレ・ラセルダ(André Lacerda)は、エタノール産業の規模と貯留に適した地質構造を挙げ、市場成長の初期段階から事業展開を支援できるとした。
制度面では、ブラジルは2024年に同国初のCCS法制度を整備し、CO2の回収・輸送・地中貯留を石油・天然ガス・バイオ燃料庁(ANP)の認可制とした。CCSおよびBECCSを対象とする施行政令は2025年後半に公開協議に付され、運用ルールの最終化段階にある。同国は2026年半ばにも南米初のCO2圧入の実現を視野に入れている。
本件は、拡大するCCUS市場における、産業技術企業と地質貯留の専門企業の協業の一例として位置づけられる。覚書段階であり、具体的なプロジェクト規模や除去系カーボンクレジットの創出計画は現時点で示されていない。
注目されるのは、その事業モデルの構図である。先進国の産業技術とエンジニアリングの知見を、エタノール由来の高濃度CO2源と貯留適地を併せ持つブラジルに持ち込み、現地の事業者と組んで除去系の供給基盤を築こうとしている。国内に大規模な削減・貯留の余地を見いだしにくい先進国の企業にとって、カーボンクレジット創出に積極的な国へ技術と知見を持ち込み、現地と連携するこの構図は、日本の関係者にとっても参照点となる。
参考:https://brazil.vallourec.com/news/vallourec-and-syngular-solutions/