米財務省が「45Z」クリーン燃料税額控除の指針案を公表 「北米産原料」への限定と排出量算定ルールを厳格化

村山 大翔

村山 大翔

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米国財務省と内国歳入庁(IRS)は2026年2月3日、国内のクリーン燃料製造業者を対象とした「セクション45Zクリーン燃料製造税額控除」の適用指針案を公表した。

本指針は2025年7月に成立したワン・ビッグ・ビューティフル法(OBBB)に基づく大幅な変更を反映したもので、2024年12月31日以降に製造され、2029年12月31日までに販売される燃料を対象に、税額控除の適格性と算定方法を明確化している。

今回の新規則における最大の焦点は、原料の調達制限と排出量算定モデルの変更である。

2026年以降に製造される燃料については、使用される原料が米国、メキシコ、カナダの北米3カ国で生産・栽培されたものに限定され、それ以外の外国産原料を用いた燃料は控除の対象外となる。これは国内農業保護とサプライチェーンの域内完結を重視する現政権の政策を色濃く反映しており、海外原料に依存するバイオ燃料事業者には戦略の見直しを迫る内容となっている。

炭素除去(CDR)の観点から重要な排出量算定については、間接的土地利用変化(ILUC)の影響を算定から除外することが明記された。これにより、バイオ燃料の炭素集約度(CI)スコアが改善しやすくなる一方で、排出率の「マイナス表記」は家畜排泄物由来の燃料という極めて限定的な例外を除き、原則として禁止された。炭素回収・貯留(CCS)を組み合わせた「ネガティブ・エミッション燃料」による過度なクレジット創出を抑制し、排出係数の下限をゼロに設定することで、制度の乱用防止を図る構えだ。

税額控除の単価については、持続可能な航空燃料(SAF)に設定されていた優遇レートが廃止され、他のクリーン燃料と統一された。基本的な控除額は1ガロン(約3.78リットル)あたり最大1ドル(約150円)に設定され、労働条件などの付帯要件を満たさない場合はその5分の1に減額される。SAF業界が求めていた1.75ドル(約263円)の割増レートが消失したことで、航空業界からは投資意欲の減退を懸念する声も上がっている

今後の手続きとして、連邦官報を通じた60日間のパブリックコメント期間が設けられ、2026年4月6日に締め切られる。

また、同年5月28日にはワシントンD.C.で公聴会が開催される予定だ。日本のバイオ燃料関連企業や北米での事業展開を検討する投資家にとって、最終的な排出量算定モデルである「45ZCF-GREET」の更新版がいつ公表されるかが、次なる焦点となる。

今回の45Z指針案は、バイオ燃料を「脱炭素の手段」から「北米農業の成長エンジン」へと再定義する強烈なメッセージとなった。

特にCDRの文脈では、マイナス排出の計上を原則禁止した点が極めて重い。これは、BECCSなどによって莫大な税額控除を狙っていた新興プレイヤーへのブレーキとなり、より現実的な「低炭素」への移行を促すものだ。

日本企業にとっては、北米産の原料確保が事業継続の「入場券」となったことを意味する。今後、トウモロコシや大豆といった農産物のCIスコアを管理する「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)」の実践が、クレジット価値を左右する主要因となるだろう。

米国の税額控除は、単なる減税措置を超え、世界のバイオ燃料市場の「品質基準」を書き換えようとしている。

参考:https://www.irs.gov/newsroom/treasury-irs-issue-proposed-regulations-on-the-clean-fuel-production-credit-under-the-one-big-beautiful-bill#:~:text=WASHINGTON%20%E2%80%94%20The%20Department%20of%20the,US%2C%20Mexico%2C%20or%20Canada;