米国がIEAに「ネットゼロ」撤回を要求 石炭火力規制も緩和

村山 大翔

村山 大翔

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米国エネルギー省(DOE)のクリス・ライト長官は、国際エネルギー機関(IEA)に対し、2050年までの「ネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)」目標を放棄するよう最後通告を行った。

これはトランプ政権が進める化石燃料回帰の一環であり、並行して米環境保護庁(EPA)も石炭火力発電所への水銀排出規制緩和を決定した。これら米国の強硬姿勢は、国際的なカーボンクレジット市場や炭素除去(CDR)技術への投資スキームに根本的な不確実性をもたらしている。

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米国のクリス・ライトエネルギー長官は2026年2月19日、パリで開催されたIEA(国際エネルギー機関)の閣僚理事会において、同機関が掲げる「2050年ネットゼロ」目標を「破壊的な幻想」と断じ、1年以内にこの方針を撤回しなければ米国が脱退する可能性を示唆した。

「ネットゼロは0%の現実味」ライト長官が猛批判

ライト長官は、IEAの看板資料である「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)」が欧州流の気候変動対策を前提としており、現実のエネルギー需要を無視していると主張。「ネットゼロが達成される確率は0.0%だ」と述べ、IEAの創設理念であるエネルギー安全保障と「エネルギーの正直さ」に立ち返るよう迫った

米国はすでに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)からの脱退方針も示しており、IEAに対しても、化石燃料の増産と消費を容認するシナリオへの書き換えを要求している。背景には、AIやデータセンターの急増による電力不足を、既存の石炭・ガス火力で補うトランプ政権の「エネルギー非常事態」宣言がある。

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国内では水銀排出規制を緩和、コスト削減を優先

これに呼応するように、米環境保護庁(EPA)は2月20日、石炭火力発電所に対する水銀・有害大気汚染物質規格(MATS)の緩和を正式発表する。これにより、電力各社は2028年から2037年の間に最大6億7,000万ドル(約1,005億円)の規制対応コストを削減できる見通しだ。

この動きは、バイデン前政権が進めていた二酸化炭素(CO2)排出規制の撤廃とセットになっており、米国内での石炭火力延命を決定づけるものとなる。

カーボンクレジット・CDR市場への波及効果

米国のこうした「脱・脱炭素」シフトは、世界のカーボン市場に激震を与えている。特に以下の3点が焦点となる。

  • 信頼性の低下
    IEAがネットゼロ・シナリオを修正すれば、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の価格根拠となる「排出ギャップ」の前提が崩れる。
  • CDR投資の停滞
    2050年ターゲットが揺らぐことで、長期的な炭素除去(CDR)への投資回収期間が見通せなくなるリスクがある。
  • 市場の分断
    米国が独自のエネルギー指標を押し通す一方、欧州や日本、そしてブラジルなどがネットゼロを堅持することで、カーボンクレジットの国際的な互換性が損なわれる懸念がある。

米国の強硬な「化石燃料回帰」は、短期的にはカーボンクレジット価格の下落要因になり得るが、日本企業にとっては「米国抜き」で進む欧州・アジア主導の新しい市場形成に目を向ける好機でもある。

特に、米国が規制を緩める一方で、グローバルサプライチェーンは依然として脱炭素を要求しており、この「ねじれ」を突いた高品質なCDRクレジットの確保が、日本企業の国際競争力を分けるだろう。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=t6IghwHJXu4