米農家に新たな収益源 「直接土壌測定」による高信頼カーボンクレジットを初発行

村山 大翔

村山 大翔

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米国のベテランズ・カーボン・ホールディングス(Veterans Carbon Holdings:VCH)は2026年2月23日、直接的な土壌サンプリングに基づき検証されたカーボンクレジットを農家へ発行したと発表した。

従来のシミュレーションモデルや衛星画像による推定ではなく、現場の物理的な土壌測定を基盤とする本手法は、農業由来の炭素除去(CDR)における信頼性と透明性を飛躍的に高めるパラダイムシフトとなる。

今回のカーボンクレジットは、非営利団体ビーカーボン(BCarbon)の「土壌炭素プロトコル v2.0」の下で、独立した第三者機関による検証を経て発行された。最大の特徴は、推定モデルでは見落とされがちな「下層土」に蓄積された炭素を、層状サンプリングによって正確に計測している点にある。これにより、従来の推定法よりも高いレベルで蓄積された炭素量を実証することが可能となった。

プロジェクトの初期段階はレッド川流域の農地から開始されたが、VCHは年内にノースダコタ州とミネソタ州西部で150万〜200万エーカー(約60万〜80万ヘクタール)規模への拡大を計画している。このイニシアチブにより、今後9年間で農家や土地所有者に対し総額11億ドル(約1,650億円)の支払いが創出される見通しだ。特筆すべきは収益配分であり、売上の55%が参加農家に直接還元される仕組みとなっている。

また、市場の信頼性を担保するため、ドブ(DOVU)のブロックチェーン技術を活用したヘデラ(Hedera)基盤のインフラを採用。すべてのカーボンクレジットをシリアル化することで、検証から販売に至るまでの完全なトレーサビリティ(追跡可能性)を確保している。これは、パリ協定第6条に関連する国際基準にも適合する設計となっており、高品質なオフセットを求める機関投資家やグローバル企業の需要を取り込む狙いがある。

ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)では、これまで「排出削減」から「炭素除去」への質的転換が求められてきた。推定値に基づくクレジットの信頼性が揺らぐ中、今回のような実測値ベースの証明は、農業を気候変動対策の有力なソリューションへと押し上げる。参加した農家の一人は「推測ではなく測定された証拠によって管理能力が報われる。これが市場のすべてを変える」と期待を寄せている。

日本企業にとっても、サプライチェーン排出量(Scope3)の削減に向けた「高品質なカーボンクレジット」の確保は急務である。特に本件のような「実測ベース」のCDRは、グリーンウォッシュ懸念を払拭する有力な選択肢となる。

測定技術やブロックチェーン管理は日本の中小企業の技術転換先としても有望であり、単なる購入者ではなく、測定・検証インフラの提供者としての参画チャンスも大きい。

参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/us-farmers-receive-first-ever-carbon-credits-from-third-party-verified-soil-samples-equaling-more-than-1-1-billion-dollars-302695131.html#:~:text=By%20measuring%20actual%20carbon%20concentrations,have%20relied%20heavily%20on%20modeling.