8月12日、米国政府は、国際海事機関(IMO)が提案する国際海運の温室効果ガス排出削減計画「ネットゼロ枠組み」に強く反対し、この案を支持する国に対して「報復措置を検討する」と警告した。
この発表は、マルコ・ルビオ国務長官ら4人の閣僚による共同声明で行われたもので、「この枠組みは実質的にアメリカ国民に課される国際炭素税であり、不公平だ」と強調した。
IMOが10月に採決を予定しているこの枠組みは、船舶に対して温室効果ガス(GHG)の排出削減を求める新たな国際基準である。基準を満たさない船には課徴金が科される可能性があり、この資金がカーボンクレジット制度の財源になると見られている。
声明では、使用が推奨される「低炭素燃料」が高価で供給量も限られているため、中国など一部の国が有利になると指摘。また、液化天然ガス(LNG)やバイオ燃料など、アメリカが得意とする燃料が排除される懸念があるとした。
さらに、「課徴金により、小型船でも数百万ドルの追加費用が発生し、輸送費やクルーズ旅行の価格が上昇する」とし、米国の消費者や業界に大きな影響が及ぶと警鐘を鳴らした。
一方で、世界の主要海運会社の多くは、2050年までに排出ゼロを目指す目標を表明しており、IMOの動きを歓迎している。船舶燃料の脱炭素化が進めば、今後、カーボンクレジットの活用や船舶向け排出取引制度の構築が加速する可能性もある。
今回の米国の強硬姿勢は、国際的な炭素市場づくりに大きな影響を与えるとみられ、10月のIMO総会が今後のカーボン政策の分岐点となりそうだ。