米国の上院議員2名が6月9日、新たな気候法案「2025年山火事削減・炭素除去法(Wildfire Reduction and Carbon Removal Act of 2025)」を提出した。炭素除去(CDR)事業のうち、森林残材の活用によって山火事を防止するプロジェクトに対し、最大180ドル(約2万8,300円)/t-CO2の税額控除を与える新制度が盛り込まれている。
税額控除の対象は「森林残材を炭素貯留に転換」
本法案は、民主党のシェルドン・ホワイトハウス議員とアダム・シフ議員が共同で起草。対象は、生物起源炭素除去・貯留(BiCRS:Biomass with Carbon Removal and Storage)に分類されるプロジェクトで、具体的には以下の条件を満たすことが求められる。
- 米森林局(U.S. Forest Service)が「山火事リスクが高く、生態系の劣化が進む」と認定した地域の森林残材を処理
- 小径木(直径8インチ未満)、枝、樹皮などを収集し、地域の持続可能性基準に準拠して利用
- 地質学的な長期貯留または100年以上の耐久性を有する用途でCO2を固定
耐久性に応じて税額控除の水準が異なり、以下の通り設定された。
- 1,000年以上の耐久性:180ドル//t-CO2(約2万8,300円)
- 100年以上の耐久性:60ドル//t-CO2(約9,400円)
BiCRSへの政策支援が拡大 「超党派の支持も期待」
本法案に先立ち、ニューメキシコ州選出のマーティン・ハインリッヒ議員も5月に「炭素除去・排出貯留技術法(CREST法)」を提出している。こちらもBiCRSを対象にした連邦税控除の創設を目指す内容であり、議会内での機運の高まりを示している。
炭素除去政策の専門家であるセバスチャン・マンハート氏は、「本法案は民主党主導であるが、共和党側にも響く内容であり、成立に向けた希望がある」と指摘した。
連邦政府の施策と業界の反応が焦点に
CDRの耐久性基準を明確化し、地元の森林管理や炭化装置(バイオ炭炉)の導入を後押しする政策として、本法案はバイオマス利活用業界から注目されている。今後、下院側での動向や、財務省・環境保護庁(EPA)による運用設計が焦点となる。
次回の議会審議は6月下旬以降の予算委員会で行われる予定であり、関連業界からのロビー活動が本格化する見通しだ。
参考:https://www.congress.gov/bill/119th-congress/senate-bill/1842/text/is