国連開発計画(UNDP : United Nations Development Programme)は、カーボンクレジット評価機関であるBeZero Carbon(ビゼロ・カーボン)とグローバルパートナーシップを締結し、途上国が高信頼性カーボン市場へ効果的に参画するための能力強化に乗り出す。
この新たな2年間の協力協定により、UNDPはBeZeroの提供する独立したプロジェクトレベルの評価データへ完全にアクセスできるようになり、各国のカーボン市場参入戦略と政策助言の質の向上を目指す。この連携は、パリ協定第6条の取り組みを含む、ボランタリーおよびコンプライアンス市場におけるカーボンクレジットの信頼性向上を主要な焦点としている。
UNDPとBeZero Carbonは、覚書(MoU)に基づき、途上国政府に対し、信頼性の高いカーボンクレジット認証と情報に基づく政策決定に不可欠なデータ、ツール、技術リソースへのアクセスを改善する。カーボンクレジット市場は、パリ協定の目標達成に不可欠な民間気候資金を大規模に動員するための主要なメカニズムの一つだが、多くの途上国は技術的能力の限界やデータの断片化といった障壁に直面している。
COP30で発表された試算によると、世界の気候変動と開発目標を達成するためには、2035年までに年間3.2兆ドル(約470兆円)が必要であり、そのうち1.3兆ドル(約190兆円)は外部資金による調達が求められており、市場を通じた資金動員は極めて重要である。
独立評価の活用で市場の透明性を確保
市場の信頼性と透明性を高める新たなツールとして、独立したカーボン評価機関の役割が注目されている。これらの機関は、クレジットの信頼性を評価し、購入者、政府、投資家に対し透明性の高いアセスメントを提供している。
高信頼性クレジットとは、実在性、追加性、検証可能性、永続性のある排出削減を表し、二重計上を回避し、強力な社会的・環境的セーフガードを順守していることが必須である。
BeZero Carbonは、この分野の主要な評価機関の一つであり、地理空間分析(Geospatial Analysis)やデータサイエンスを駆使し、ボランタリーおよびコンプライアンス市場の両方で、プロジェクトレベルのリスクとパフォーマンスを評価する。この評価と分析は、すでにスイス連邦環境局やシンガポール国家環境庁などの政府機関が、パリ協定第6条に関するデューデリジェンスの一部として導入している。
政策助言と第6条指針の共同開発
新しいパートナーシップの下で、BeZeroはUNDPチームに対し、プロジェクトレベルの評価、リスク指標、およびセクター全体の分析を含むプラットフォーム全体への完全なアクセスを付与する。UNDPはこれにより、各国政府への政策助言を強化し、カーボン市場への関与に関する国家戦略の向上を図るとしている。
また、両者は、第6条のガイダンスや各国ニーズに合わせた能力構築リソースなど、高信頼性市場に関する具体的な知識資料を共同で開発する。これは、途上国政府が、国の開発優先事項と整合し、地域社会に実質的な利益をもたらすカーボン市場の枠組みを形成する上で不可欠な支援となる。
この2年間の協定は2027年10月まで継続する予定であり、その間に得られる評価データは、国際的なカーボン市場における高信頼性の基準を確立するための議論を加速させる見込みである。

