国連が新しいカーボンクレジット基準を採択 生活インフラ不足の地域も支援対象に

村山 大翔

村山 大翔

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パリ協定の国連炭素市場を運営する「第6条4項監督機関(Article 6.4 Supervisory Body)」は7日、電気や水道などの生活インフラが不足している地域でも利用できる新しい基準「抑制需要(Suppressed Demand)」を採択した。これにより、住民の生活改善と温室効果ガス(GHG)削減を同時に進めるプロジェクトが、カーボンクレジットの対象になりやすくなる。

抑制需要とは、人々が電気や水道などをあまり使っていないのは、本当に必要がないからではなく、お金がない、または設備がないために利用できない状態を指す。
新基準では、もしインフラが整っていた場合に発生していたはずの排出量を基準(ベースライン)として設定し、そこから排出を抑える形で生活の質を向上させるプロジェクトを評価できるようにする。

監督機関のマーティン・ヘッション議長は「基本的な生活ニーズを基準として認めることで、これまで支援が届きにくかった地域にも開発と気候対策の両方の利益をもたらせる」と述べた。

併せて、専門家パネル(MEP)は、森林や土壌による炭素貯留が将来失われるリスク(非永続性)や、排出削減が巻き戻される「リバーサル」への対応基準案をまとめた。
この案は9月に最終化され、10月6〜10日の次回会合で採択を目指す。

監督機関は2026〜2027年の計画も承認。市場運営に必要なインフラ整備には大きな初期投資が必要で、現時点で収入は限られている。このため、議長と副議長が各国に資金拠出を呼びかける方針だ。

今回の新基準により、クリーンな調理設備、太陽光発電、浄水システムなど、これまで評価が難しかった途上国の生活改善型プロジェクトもカーボンクレジットを得やすくなる。これは、気候変動対策と貧困削減を同時に進める新たな一歩となる。

参考:https://unfccc.int/news/un-body-adopts-standard-to-support-climate-efforts-in-communities-lacking-basic-needs#:~:text=UN%20Climate%20Change%20News%2C%207,such%20as%20water%20and%20sanitation.