英国政府 「15年収入保証」で炭素除去(CDR)を支援 DAC・BECCSに標準契約

村山 大翔

村山 大翔

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英国政府は8月27日、温室効果ガス(GHG)除去の政策的確実性と経済性を高めるため、新たなビジネスモデルの詳細を公表した。契約差額決済方式(CfD)に基づき、15年間にわたり収入を保証する仕組みを導入し、直接空気回収・貯留(DACCS)やバイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)の普及を後押しする狙いである。

今回提示された「温室効果ガス除去契約(GGRコントラクト)」は、同国初の正式な標準契約であり、草案として前文協定と標準契約条件が公開された。契約の対象となるのは、ヒネット(HyNet)トラック1拡張の交渉リストに含まれる案件で、一部は政府の助成金協定(GGR GFA)による追加支援も受けられる。

英規格協会(BSI)は7月、BECCSとDACCSに関する暫定的な定量化手法を公表しており、これが「最低品質基準」として契約交渉に適用される。将来的には、これを基盤に包括的な「GGRスタンダード」が策定される見通しだ。

英国はすでに排出削減に向けた排出量取引制度(ETS)を展開しているが、炭素除去はクレジットの信頼性確保と市場拡大に直結する領域である。長期の収入保証が整備されれば、民間投資が呼び込みやすくなり、1トン当たりの除去コスト削減や国際市場でのクレジット流通にもつながる。

今回の提案は、同国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)が2023年12月に発表した基本方針の更新版であり、今後の契約交渉と標準化作業を通じて、実際の商業化に向けた道筋を固めることになる。

日本にとっても、DACCSやBECCSの国際標準化はクレジット市場へのアクセスや企業の自発的取り組みに直結する課題であり、英国モデルは重要な参考事例となる。

参考:https://www.gov.uk/government/publications/greenhouse-gas-removals-ggr-business-model#full-publication-update-history