ノーザン・エンデュランス・パートナーシップ(Northern Endurance Partnership:NEP)と王領地管理団体(The Crown Estate:ザ・クラウン・エステート)は2026年1月22日、英国初となる商用規模のオフショア二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの建設に向けた画期的な海底借地契約を締結した。
本合意により、北海南部のエンデュランス炭素貯留サイトおよび関連パイプラインの敷設が許可され、英国のネットゼロ戦略における核心的なインフラ整備が本格化する。
今回の契約は、恒久的なオフショアCO2貯留と関連インフラを対象とした英国初の商用リースであり、今後の国内沿岸部におけるCCS開発の法規制および商業的なテンプレートとなる。2023年9月に署名された借地予約合意(Agreement for Lease)に基づくもので、プロジェクトの完全履行に向けた最終的なマイルストーンを達成した形だ。
対象となるエリアは、ティーズサイドの産業集積地から約145キロメートル離れた北海南部に位置し、大規模な食塩水帯水層である「エンデュランス」貯留サイトを含んでいる。周辺の地質構造を合わせたエンデュランス・コンプレックス全体では、約10億トンのCO2貯留容量を確保できると推定されており、2050年代半ばまでの操業が予定されている。
NEPは2024年後半に、主要な規制および財務上の承認を相次いで取得してきた。同年12月には、ネット・ゼロ・ティーズサイド・パワー(Net Zero Teesside Power)プロジェクト向けを含むオンショアCO2輸送インフラの第一段階について、ファイナンシャル・クローズ(融資実行条件の充足)を達成した。
同時に、ティーズサイドとエンデュランス貯留サイトを結ぶ約145キロメートルのオフショアパイプラインについても資金調達を完了し、北海移行庁(North Sea Transition Authority:NSTA)から英国初となるオフショア炭素貯留許可を獲得した。すべての主要な同意事項が整ったことで、建設活動はすでに開始されており、2028年の稼働開始を目指している。
NEPのマネージング・ディレクターであるリッチ・デニー(Rich Denny)氏は「英国初のオフショア炭素輸送・貯留インフラの建設開始は、ネットゼロへの道程を推進し、経済成長を後押しするものだ」と述べた。また、ザ・クラウン・エステートのCCS・水素担当ディレクターであるデニース・モイラン(Denise Moylan)氏は「大気中への放出を回避して炭素を貯留することで、排出削減が困難な産業の脱炭素化を支援し、イングランド北東部の経済成長を牽引する」と指摘した。
本プロジェクトは、発電、化学、重工業などのハード・トゥ・アベート(排出削減困難)部門の脱炭素化を可能にする国家的重要インフラと位置づけられている。エンデュランス・プロジェクトは、英国全土でのCCS展開の触媒となり、長期的な気候変動戦略の一環として炭素管理インフラへの投資を加速させることが期待される。
今回の英国の動向は、単なるインフラ建設の開始にとどまらず、CCSを「持続可能なビジネス」として確立するための法・権利関係の整備が完了したことを意味する。特に、海底の権利を持つザ・クラウン・エステートが商用リースを実行したことは、将来的なカーボンクレジット(貯留による除去クレジット)の権利帰属や、法的責任の所在を明確化する重要な前例となる。
日本国内においても「CCS事業法」の成立により事業環境の整備が進んでいるが、先行する英国の「借地契約のテンプレート化」は、日本の事業者にとってもプロジェクトファイナンス組成時のリスク評価における極めて重要な参照モデルになるだろう。
今後は、2028年の稼働時に向けて、どの程度の排出削減枠が市場で取引可能な「クレジット」として流通するのかが、投資回収の観点から次の焦点となる。
参考:https://northernendurancepartnership.co.uk/2026/01/21/northern-endurance-partnership-and-the-crown-estate-sign-lease-for-uks-first-ccs-project-ahead-of-offshore-construction/


