英国および欧州大陸の主要港湾・インフラ事業者は1月27日、北海を横断する二酸化炭素(CO2)の海上輸送ルート開発に向けた協力協定を締結した。
ハンブルクで開催された国際北海サミットにおいて、アソシエイテッド・ブリティッシュ・ポーツ(ABP:Associated British Ports)、エル・ビー・シー・タンク・ターミナルズ(LBC:LBC Tank Terminals)、北海ポート(North Sea Port)、エスビャウ港(Port of Esbjerg)の4社が、炭素回収・貯留(CCS)の社会実装を加速させる2つの覚書(MoU)に署名した。
この提携により、欧州北部の産業排出源と英国・デンマーク沖の地質学的貯留サイトを結ぶ専用の「CO2輸送コリドー」の実現可能性を調査する。
今回のパートナーシップは、既存のパイプライン網から離れた場所に位置する産業クラスターにとって、海上輸送が柔軟な代替手段として注目されている背景がある。港湾運営者が回収サイトと貯留ハブを繋ぐ重要な仲介役を担うことで、台頭する炭素物流市場での地位を確立する狙いだ。
ABPはすでに、ヴァイキングCCS(Viking CCS)プロジェクトのハンドリング拠点となるイミンガム・グリーン・エナジー・ターミナルの計画承認を取得している。同施設は、船舶で運ばれたCO2を英国北海南部の枯渇ガス田へ接続する役割を果たす。また、LBCは液体バルク貯蔵の知見を活かし、CO2の一時貯蔵や調整、移送業務を支援する。
欧州大陸側では、ベルギーとオランダにまたがる北海ポートが、中心的な立地を活かして複数の産業地帯からの排出を集約し、沖合への発送拠点となる計画を掲げている。一方、デンマークのエスビャウ港は、同国のグリーンサンド(Greensand)CCSプロジェクトに向けたインフラ整備を推進中だ。現在、合計貯蔵容量約6,000トンの大型タンク6基を備えたCO2トランジット・ターミナルの建設を進めており、2025年5月に着工している。
業界団体である炭素捕獲・貯留協会(CCSA:Carbon Capture and Storage Association)の最新分析によると、英国と欧州連合(EU)の輸送・貯留ネットワークを統合することで、規模の経済が働き、CO2の輸送・貯留コストを最大20%削減できる可能性がある。地域的な調整によって設備利用率を高め、コスト効率を改善することが、欧州全体の脱炭素化を後押しすると期待されている。
ABPのヘンリック・ピーダーセン最高経営責任者(CEO)は、港湾は常にエネルギーのゲートウェイであり、現在はエネルギー転換の最前線に位置していると指摘した。その上で「今回の合意は、産業の脱炭素化に必要なインフラとパートナーシップを構築し、持続可能な成長のための新たな機会を創出するものだ」と述べた。
北海ポートのカース・ケーニッヒCEOは、2050年までのネットゼロ実現という目標を掲げ、今回のMoU締結を「排出者と北海の認定貯留地を結ぶクロスボーダーなCO2コリドーを調査するための実践的な一歩」と評価した。
北海沿岸の港湾各社は今後、CO2の取り扱い、貯蔵、出荷に関する港湾インフラの設計に注力する。また、ハンバー地域の港と欧州主要港を結ぶ強固なバリューチェーンの構築を進め、CCUSに関連する輸送効率の向上を図る方針だ。
今回の英欧連携は、カーボンクレジット市場における「回収・貯留」の信頼性を裏付ける物理的なインフラ整備として極めて重要である。特に日本のような島国にとって、パイプラインに頼らない「船舶によるCO2輸送」のモデルケースとなるだろう。
今後は、国境を越えたCO2移送に関する法整備や、貯留コストの低減がどこまで進むかが、クレジット価格の妥当性を左右する焦点となる。


