英国ETS、2026年の無償割当を5%超削減へ 航空部門は「完全廃止」で脱炭素を加速

村山 大翔

村山 大翔

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英国排出量取引制度(UK ETS)当局は、2026年度における産業部門への炭素排出枠(パーミット)の無償割当を、当初の予測を上回る前年比5%超の削減幅とすることを確定させた。特に航空部門については2026年1月1日付で無償割当を完全に廃止し、全ての排出量に対してオークション等での購入を義務付ける。

今回の決定は、2027年に導入を控える英国版炭素国境調整措置(UK CBAM)との整合性を高め、産業界の脱炭素化を強力に促す狙いがある。

排出枠供給の絞り込みと対象拡大

今回の発表により、製造業を中心とした産業用無償割当は、2025年12月時点の予測値からさらに3%引き下げられ、最終的な削減幅は5%を超えることとなった。これは、英国政府がカーボンリーケージ(規制の緩い国への産業流出)対策を維持しつつも、排出枠の希少価値を高めることで、企業にクリーン技術への投資を促す姿勢を鮮明にしたものだ。

また、2026年からは海事セクターも新たに制度の対象に加わる。総トン数5,000トン以上の船舶による国内航行が対象となり、排出量取引の網がさらに広がる。

炭素価格の底上げと定量情報

市場の安定性を担保するため、英国政府はオークション予備価格(ARP:最低入札価格)の引き上げも決定した。2026年には、インフレ調整を反映して現在の1トンあたり22ポンド(約4,300円)から28ポンド(約5,500円)へと引き上げられる。

また、航空セクターの無償割当廃止は、欧州連合(EU)のETS規制とも足並みを揃える形となる。これにより、英国を拠点とする航空会社は、今後すべての排出に対してコスト負担を強いられることになる。

制度の継続性と将来の展望

今回の調整に伴い、定置型施設に対する第2期公式割当期間の開始は、当初の2026年から2027年へと1年後ろ倒しされた。これは2027年1月1日に施行されるUK CBAMとの同期を確実にするための戦略的措置である。

現在、無償割当を受けている事業者は、2027年から2030年の次期期間に向けた申請として、2026年4月1日から6月30日の間に2回目の基準データ報告書を提出する必要がある。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は、これらのプロセスを通じて、排出削減のインセンティブと産業競争力の維持のバランスを精査していく方針だ。

英国の今回の決定は、単なる規制強化ではなく、炭素に確実な「価格」をつけ、市場原理で脱炭素を加速させる強い意志の表れだ。無償割当の削減と海事・航空への対象拡大は、必然的に英国産クレジット(UKA)の需給を逼迫させる。これは、炭素除去(CDR)技術を持つ日本企業にとって、英国市場でのプレゼンスを高める大きなチャンスとなるだろう。特に海事セクターの参入は、日本の造船・海運大手にとってカーボンクレジット戦略の再考を迫る重要な指標となる。

参考:https://www.gov.uk/government/publications/uk-ets-allocation-table-for-operators-of-installations