米トランプ政権は9月5日、エネルギー関連の規制方針をまとめた「春の統一規制アジェンダ」を公表し、洋上における二酸化炭素(CO2)貯留ルールの策定工程を示した。石油・ガス産業を支援する姿勢を鮮明にする一方、CO2パイプライン規制や森林下での貯留ルール整備は先送りされ、炭素除去(CDR)産業にとって重要な論点が浮き彫りとなった。
アジェンダによれば、内務省の海洋エネルギー管理局(BOEM)と安全環境執行局(BSEE)は、2026年5月に洋上貯留に関する規則案を公表する予定だ。ただし最終化の期限は示されていない。これは2021年の超党派インフラ法が2022年11月までに規則策定を求めていたものの、技術的課題を理由に大幅に遅れている。
すでにエクソンモービル(Exxon Mobil)やシェブロン(Chevron)は、テキサス州沖の州管轄海域でCO2貯留リースを取得しており、連邦水域での規制明確化を待ち望んでいる。カーボンキャプチャー・コアリションの政策マネージャー、クリスチャン・フリン氏は「業界が外縁大陸棚でCO2貯留を進めるには不可欠な規則だ」と述べ、早期の公開を求めた。
米国内では45Q税額控除が依然としてCDR推進の柱であり、2032年までに建設開始すればプロジェクトが適用対象となる。しかしパイプライン規制を所管する米運輸省パイプライン危険物安全局(PHMSA)は、CO2輸送基準強化案を「長期的検討」に回し、直近の規制計画から外した。これには、NGOなどから「規制の遅れは地域社会を危険にさらす」と批判が上がっている。
欧州ではノルウェー沖の「スライプニル」「スノーヴィット」に続き、直近の8月には「ノーザンライツ」計画が正式に稼働。CO2を水深2,600メートルの海底下に注入し、長期貯留を開始した。
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欧州の先行事例は米国での規制整備に圧力を与える可能性がある。
今後、内務省は12月に22年ぶりの原油流出対応規則改定を示す予定であり、炭素貯留を含む環境規制の優先順位が引き続き注目される。洋上CO2貯留規則案は2026年5月に発表予定だ。
参考:https://www.boem.gov/oil-gas-energy/resource-evaluation/carbon-storage?utm_source=chatgpt.com