Trafiguraが「電化バイオガス」SAFを長期購入 ウルグアイでCO2除去と燃料製造を両立

村山 大翔

村山 大翔

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世界最大級のコモディティ取引会社であるトラフィグラ(Trafigura Pte Ltd)は2026年1月20日、米技術スタートアップのシジジー・プラスモニクス(Syzygy Plasmonics)との間で、持続可能な航空燃料(SAF)の長期購入契約を締結した。

ウルグアイで2028年に稼働予定の商業プラント「NovaSAF-1」から、6年間にわたり全生産量を購入する。このプロジェクトは、バイオガスと再生可能エネルギーを用いた独自の電化技術を活用し、航空部門の脱炭素化と農業由来のメタン削減を同時に実現するモデルとして注目されている。

契約の対象となるNovaSAF-1は、ウルグアイのドゥラスノに建設される世界初の「電化バイオガス・トゥ・SAF」施設である。この施設では、現地の粉乳工場であるエスタンシアス・デル・ラゴ(Estancias Del Lago)から供給されるバイオガスを原料とし、光反応技術を用いたシジジー社独自の反応器で燃料を合成する。従来の化石燃料由来のジェット燃料と比較して、ライフサイクル全体で排出量を90%削減することが可能だ。

今回の提携には、トラフィグラが将来的にシジジーが展開する後続プロジェクトからも追加で燃料を購入できるオプションが含まれている。これは欧州や英国で厳格化するSAFの混合義務化(ブレンディング・マンデート)に対応するための戦略的な動きである。シジジー社は2025年12月に基本設計(FEED)を完了しており、今回の長期購入契約(オフテイク契約)の締結によって、プラント建設に向けた資金調達の準備が整った。

技術面では、シジジーの「NovaSAF」パスウェイが非生物起源の再生可能燃料(RFNBO)としての基準を満たし、国際持続可能性炭素認証(ISCC)の予備認証を取得している点が大きな特徴である。

光触媒を用いた化学反応プロセスにより、燃焼を伴わずに電気でバイオガスをSAFに変換するため、従来のバイオ燃料製造で課題となっていた原料供給の制約を克服する拡張性を備えている。

トラフィグラの低炭素燃料事業開発責任者であるジェイソン・ブレスロウ氏は「長期的なオフテイクを約束し、商業的な確実性を提供することで、シジジーのような革新的な企業がプロジェクトの資金を確保し、生産を拡大することを支援する」と述べた。トラフィグラは、原料の調達から混合、流通に至るまでのグローバルなサプライチェーンを通じて、航空業界の顧客がコスト効率よく排出規制を遵守できるよう支援する方針だ。

シジジー・プラスモニクスのトレバー・ベスト最高経営責任者(CEO)は「世界的なリーダーであるトラフィグラとの契約は、当社の技術を可能性の段階から実際の生産へと移行させる重要なステップである」と指摘した。同社はテキサス州ヒューストンに本社を置き、光反応技術による化学品製造の脱炭素化を推進している。

航空業界では、廃食油や農業残渣などの従来のSAF原料の争奪戦が激化しており、バイオガスや二酸化炭素(CO2)を原料とする「次世代型SAF」の確立が急務となっている。ウルグアイのプロジェクトは、農業廃棄物からのメタン回収という炭素管理(カーボン・マネジメント)の側面と、電化プロセスによるクリーン燃料製造を統合した先駆的な事例となる。今後は、2028年の供給開始に向けたプラントの建設進捗と、他地域への技術展開が焦点となる。

今回の提携は、単なる燃料の売買契約にとどまらず、カーボンクレジット市場における「高品質な排出削減・除去」の新たなスタンダードを示唆しています。シジジーの技術は、大気中への放出が懸念されるメタン(バイオガス)を原料として固定化し、さらに再生可能電力を「液体燃料」という形で貯蔵するものです。

これは、自然由来のクレジットに依存してきた航空業界が、技術ベースの確実な削減(RFNBO)へとシフトしている証左と言えます。特に、日本の商社やエネルギー企業にとっても、こうした「農業大国での電化プロセスによる燃料製造」は、海外での二国間クレジット(JCM)創出や、国際的なSAFサプライチェーン構築における強力なベンチマークになるでしょう。

参考:https://www.trafigura.com/news-and-insights/press-releases/2026/trafigura-signs-offtake-agreement-for-advanced-sustainable-aviation-fuel-produced-from-biogas/