最新ニュース
海外ニュース

ティバノ、ナミビアの地中バイオマス貯留事業でアフリカ初・最大規模のCORCを発行

2026.05.26 読了 約3分
ティバノ、ナミビアの地中バイオマス貯留事業でアフリカ初・最大規模のCORCを発行
出典:<a href="https://puro.earth/cdr-credit-suppliers/facilities/carbonsate-project-namibia/" target="_blank">Puro.earth</a>

スイス・チューリッヒ拠点のCDR企業ティバノ(Tivano)は、ナミビアで展開する「Dragonflyプロジェクト」から初回となるCO2除去証書(CORC)(=CDRクレジット)を発行した。発行量は1,000 CORCを超え、地中バイオマス貯留(Terrestrial Storage of Biomass)方式としてはアフリカ大陸で最大規模の事業となる。

事業地はナミビア中部の都市オチワロンゴ(Otjiwarongo)近郊で、当該地域はブッシュ・エンクローチメント(侵入性低木の繁茂)により在来植生と水文系が劣化する深刻な環境問題に直面している。ティバノはこの侵入性低木を選択的に伐採し、専用に設計された地中構造へ封じ込めることで分解を遮断し、大気中CO2の長期固定化を実現する。

発行されたCORCはPuro.earthの「Terrestrial Storage of Biomass」方法論に基づき認証されており、永続性100年以上を要件として満たす。

永続性100年という基準は、植林・森林管理を中心とする自然由来カーボンクレジットと、DACCSやBECCS等の工学的CDRの中間に位置する設計である。 伐採バイオマスを地中の工学的封じ込め構造に格納することで自然分解を停止させる仕組みは、原料調達は自然由来でありながら貯留メカニズムは工学的という、ハイブリッド型の除去アプローチに分類される。

方法論上、バイオ炭と性質を比較される局面が多い。バイオ炭が熱分解処理を経て炭素を化学的に安定化させるのに対し、地中バイオマス貯留は物理的な隔離環境の維持により分解抑制を担保する。MRVの観点では、貯留構造の長期完全性、嫌気環境の維持、漏出経路の監視といった工学的検証要件がクレジット品質を左右する。

Dragonflyプロジェクトは120ヘクタール(サッカー場約170面相当)の劣化地を修復したと報告されている。ティバノによれば、侵入性低木の除去後8カ月以内に在来草地が再生し、サバンナの水文系が回復、野生生物の生息地も復元されつつある。コベネフィットとしては野生生物生息地の修復、地下水とサバンナ水文の改善、現地15名の新規雇用創出による農家の所得向上が挙げられる。

一方で、地中バイオマス貯留方式に対しては、貯留構造の超長期完全性をどう保証するか、規模拡大時の土地利用競合をどう管理するかといった論点も指摘されている。永続性100年は方法論上の最低要件であり、それを超える期間の検証枠組みは発展途上にある。CORCはティバノ経由で、高品質除去系カーボンクレジットを求める法人需要家向けに販売される。

本件は、地中バイオマス貯留方式が事業化フェーズに到達したことを示すアフリカ初の実例として位置づけられる。

注目すべきは、原料調達の自然由来性と貯留メカニズムの工学的性格を組み合わせた、NbSと工学的CDRの中間領域に位置するハイブリッド型アプローチが実装段階に入った点である。植林系の永続性リスクとDACCSの高コスト・低スケール性という両極の制約を回避しうる設計として、除去系カーボンクレジットのポートフォリオ多様化に資する選択肢が増えたことを意味する。

ただし、ハイブリッド型CDRの市場評価軸はバイオ炭・BECCS・DACCS等との相対比較で定まっておらず、価格水準・品質階層上の位置づけは今後の発行実績の積み上げを待つ局面にある。

工学的封じ込めの長期完全性検証手法と、ブッシュ・エンクローチメント対策という地域固有の環境課題を炭素資産に転換する事業モデルの他地域展開可能性が、地中バイオマス貯留方式の市場成熟を左右する論点となる。

参考:https://puro.earth/cdr-credit-suppliers/facilities/carbonsate-project-namibia/

関連タグ CDR Puro.earth アフリカ
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。