近年、デジタル広告の温室効果ガス(GHG)排出量が企業のサステナビリティ課題として浮上しています。世界で10億人以上が利用するTikTokも例外ではなく、同社の年間GHG排出量はギリシャ1国に匹敵する規模と推計されています。
本コラムでは、 2025年6月に発表されたTikTokとScope3のパートナーシップを取り上げ、課題、戦略を整理します。
サマリー
- TikTokは広告主のScope3排出を可視化するため、測定専門企業「Scope3, PBC.(企業名)」と提携。
- Scope3, PBC.社はオープンソースの排出モデルを用い、広告1,000インプレッション当たりの排出量(gCO2)で報告。
- 測定→最適化→削減という三段階アプローチで、広告主の低炭素メディア設計を支援。
- 日本企業も「広告サプライチェーン排出可視化」を進める好機となる。
デジタル広告とカーボンフットプリント
デジタル広告は配信サーバー、データセンター、視聴端末の電力消費が主因となり、世界電力需要の約3〜4%を占めるとも言われます。TikTokの排出量は年間約5,000万t-CO2eに達すると試算され、ユーザー1人当たりではYouTubeやInstagramを上回ると報告されています。
その課題は「見えにくさ」であり、 広告主は自社の広告がどの程度排出しているか把握しづらく、対策に手が付かないのが現状です。
TikTok×Scope3, PBC.社の連携
測定フレームワーク
Scope3, PBC.社はgCO2PM(1,000インプレッション当たりのCO2e排出量)を共通指標とし、
- Ad Selection(入札・配信で発生する計算処理)
- Media Delivery(CDN、端末通信)
- Creative Assets(動画サイズ・エンコード方式)
の各段階をモデル化します
TikTok側のデータ連携
TikTokはファーストパーティの配信ログをScope3, PBC.社に提供し、第三者検証を受けることで排出量算定の透明性を担保。2025年2月にAd Net Zeroと実施した「giffgaffキャンペーン」で培ったサステナブルな制作・配信ノウハウが基盤となっています。
広告主のメリット
- 可視化:キャンペーン単位で排出量レポートを取得。(1次データの取得)
- 最適化:高排出フォーマットや配信国を特定し、設定を自動調整。
- 報告対応:CSRDやISSB基準で求められるScope3開示に活用可能。
まとめ
本コラムは、 TikTokとScope3, PBC.社の協業が「広告排出量の見える化と削減」という業界課題に対し、測定標準と実行可能なアクションを提示した点を整理しました。
今後は日本企業もデジタル広告のサプライチェーン排出の把握と最適化を進めることで、自社のネットゼロ目標達成だけでなく、広告業界全体の脱炭素化を加速させることが期待されます。
参考:https://ads.tiktok.com/business/en-US/blog/tiktok-scope3-measure-reduce-ad-campaign-emissions?attr_source=linkedin&attr_medium=social&campaign=brandsafety-Scope3-BrandSafety&acq_banner_version=73758463