英DAC企業The Carbon Removersが1.9億円の資金調達を実施 2030年に年100万トンのCO2除去へ

村山 大翔

村山 大翔

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英国の炭素除去(CDR)スタートアップであるザ・カーボン・リムーバーズ(The Carbon Removers)は1月7日、地域経済開発機関のサウス・オブ・スコットランド・エンタープライズ(SOSE)から約1億9,000万円(約100万ポンド)の資金支援を獲得したと発表した。

同社はこの資金を呼び水としてさらなる投資を募り、2030年までに年間100万トンの二酸化炭素(CO2)除去を実現するための事業拡大を加速させる。

スコットランドのダンフリーズ近郊に拠点を置く同社は、ウイスキーの蒸留所やバイオガスプラントの発酵過程で発生するCO2を回収する技術に特化している。回収されたCO2は、地中深部への貯留や建設資材への鉱物化といった手法で永続的に隔離される。現在、英国とデンマークで年間合計10万トンのCO2除去プロジェクトを推進しており、今回の支援を通じて英国全土および欧州への展開を強化する。

今回のSOSEによる出資は、将来的に同社が2034年度から2035年度までに年間売上高10億ポンド(約1,900億円)規模の企業へ成長することを見据えた戦略的なステップである。SOSEは既存の融資を株式に転換する計画も進めており、これにより農業やバイオエネルギー、スコットランドの基幹産業であるウイスキー産業のネットゼロ移行を後押しする構えだ。

エド・ニモンズ氏とリチャード・ニモンズ氏の兄弟によって設立された同社は、人口わずか300人余りの小規模な村であるクロケットフォードから事業を開始した。同社は英国企業として初めてデンマークでのCO2貯留ライセンスを取得しており、欧州連合(EU)初のCO2貯留施設へのアクセス権を持つ先駆的な存在として注目されている。

スコットランド政府のケイト・フォーブス副首相は「炭素回収・貯留(CCS)は、化学やセメントといった排出削減が困難なセクターのネットゼロ移行において極めて重要である。スコットランドの自国企業が国内外でこの分野を牽引していることは喜ばしい」と述べ、地域経済への雇用創出効果に期待を寄せた。

また、サウス・オブ・スコットランド・エンタープライズ(SOSE)のラッセル・グリッグス(Russel Griggs)会長は「彼らは当初、地方の小規模な拠点からスタートしながら、新型コロナウイルスワクチンの展開でも重要な役割を果たし、現在は国際的な炭素除去事業へと多角化を遂げた。地方という立地がイノベーションの妨げにならないことを証明している」と評価した。

ザ・カーボン・リムーバーズの共同創設者であるリチャード・ニモンズ氏は、SOSEとの連携を強化し、スコットランド南部を拠点に国際的な炭素回収スキルの向上と事業拡大に邁進する意向を示した。同社は今後、数カ月以内にさらなる大規模な資金調達ラウンドを完了させる予定である。

今回のニュースは、単なるスタートアップの資金調達以上の意味を持ちます。注目すべきは、ウイスキー蒸留所というスコットランドの伝統的かつ「高純度なCO2を排出する」点源に着目したビジネスモデルです。大気中から直接回収するDACに比べ、発酵工程のCO2回収はエネルギー効率が高く、コスト競争力に優れます。

また、英国企業が自国内だけでなく、貯留インフラの整備が進むデンマークにいち早くライセンスを確保した点は、今後のCDRクレジットの国際取引において大きな優位性となります。日本においても、地方の酒造メーカーやバイオガス施設を活用した「分散型CDR」モデルの参考になる事例と言えるでしょう。

参考:https://thecarbonremovers.com/sose-makes-investment-to-help-create-1bn-south-of-scotland-business/